学年の頭を張っているYとは仲が良かったわけではないし、むしろ会話したこともない。


彼は殆ど学校に来ないし、来たとしても"仲間"とは名ばかりの部下たちにしか会わない。


時々学校に来るという噂がたてば原付で登校。

授業には出ず、ヤンキーたちを集め流行りのカードゲームや購買の食料を買い占めて詐欺のようなビジネスを展開している。


買い占める資金はカツアゲして調達しているらしい。


絡まれたら一番面倒なグループである。




一方僕はヤンキーとは真逆のコミュニティに所属し、毎日学校に通っている。


ある日の弁当の時間に友人Rがこんな事を言い出した。

「Yがお前に会いたがっていたよ。」


意外な話だった。

同い年のやんちゃグループに恐れを抱いていた訳ではないが、周りの評判やイメージで正直苦手なタイプだったのと、向こうもあまり目立たない僕に興味があるとは思っていなかったからだ。

ただ向こうから会いたいという事なら悪い気はしない。


RはYのグループに所属しているが僕らのグループとも仲が良く、同学年にも多方面に友人がいる。

特に周りから怖がられている存在ではないが、外ではグレーな業界に顔が利き、学校外でもやんちゃなグループに所属しているためYからも一目置かれている。当然部下だとも思われていない。

とんでもなくイケメンで高身長。


そんな彼が間に入っているということは悪い誘いではないのは確実である。


「そう。じゃあ放課後会いに行ってみるよ。」

そう言って弁当を食べ終えた。






6時間目を終えるチャイムが鳴り、帰宅部は下校。

部活動をしている者は各活動場所に移動するため、各教室はフリースペースとなる。



僕はYに会いに一番奥にある6組の教室へと向かった。



ガラガラっと扉を開けると嗅いだことのない数種のキツい香水が混ざった匂いと、隠す気のないタバコの匂いがこの教室の異様さを語っている。


10人ほどが一気にこちらを向き、一番奥に鎮座するYが手招きをしている。


「よう。」


「お、おう。」


少し緊張した僕にYは微笑みながら握手を求めた。


「お前、俺らの仲間にならないか?」


単刀直入である。

そしてなるほど。その誘いも悪い気はしない。

しかし僕は校内の詐欺もカツアゲもする側に回るのは一切望んでいないので、


「あー...でも俺ヤンキーとか興味なくて...。」


そんな気の利かない僕の回答に少し曇った表情を見せたYだったが、


「別にヤンキーとかじゃねぇけどさ。Rとも仲良いみたいだし、なんかあったら俺らにも相談してくれよ。」


この一言に完全に心を許してしまった。

10代とは思えない見た目とその印象とは真逆の"親近感の湧く一言"だったからである。

案外良いやつなのかもしれない。


それにしても「なんかあったら〜」っていったい何があるというのだろうか。


そんな事はどうでも良いが、とにかくこんな事になるとは思っていなかったのでRには感謝である。


同級生たちが恐れを抱く存在とも繋がりを持った事で少なくとも自分の友人達が万が一絡まれた時に話をつける事が出来るからだ。


「つーわけで今後もよろしくな。これ、仲間の証に。」


僕に差し出した金色に輝いたそのカードは、流行りのカードゲームの中でも一際レアなカードだった。


「え...こんなのもらっていいの?」


Yは爽やかな笑みを浮かべながら答えた。


「ああ。金に困ったら売りな。少なくとも100万にはなるから中絶費何回か分にはなるだろ。」


なんとも強烈な一言に戸惑いを隠しつつ適当に相槌を打ち、Yと連絡先を交換したあと6組の教室の出口まで歩いた。


すると表に立っていた部下たちが僕に近寄り一枚の紙切れを見せて来た。


「本日の会費です。」


内容は120万円。


「え...」


すかさず教室に戻ろうとしたが何故か扉は開かない。

Yに電話をかけようとしたが携帯を取り上げられてしまった。

その焦った様子を見かねて2人は僕の両腕を力強く取り押さえる。


「Yさん、こいつ未払いです。」


2人は教室の中に聞こえるくらいの大きな声で言い放ち、僕を体育館裏へと連れて行った。


この時点でポケットにしまったはずのレアカードも無くなっている。


(何をされるんだろう。まぁきっとボコられて支払いはチャラにならないとか理不尽な感じなんだろうな...)


そんな事を考えながら体育館裏へ到着し、両手を背中で縛られた状態で座らされた。




校舎と体育館に挟まれたこの狭い空間は、日中も日が当たることのない日陰になっており、真夏なのに肌寒いのがより一層気味悪い。


というかこんな所、仮に大声で助けを求めても誰にも届かないのは容易に想像できる。


そんな中、先程6組の教室にいた連中が徐々に集まり始め、最後に2人ガタイの良いのがゆっくりと歩いてくる。


逆光でシルエットしか見えないが恐らく片方はY。

もう片方は...





















R...



















ここで目が覚めました。

本日の夢。

過去の経験談ではありませんが、YもRも実在するし、すごくリアルな夢でした。


先月も面白い夢をみて下書きしてるのですが、最後まで覚えておらず中途半端になっているので続きを見ることがあればその時に描いてみようと思います。




それでは二度寝して参ります。