深夜番組を見ていたら、懐かしい場所が出てきた。
ちっちゃい、偉大なマーライオンが水を吐く湾だ。
住んでいたのは、わずか数年間だけである。
出たり入ったりを通算しても、5、6年しかいたことがない。
が、人生で一番燃えていた時期だったから、強烈な記憶が残る場所だ。
国際指名手配犯人の呪縛からも解かれて、自分に自信がついてきた頃だ。
大学時代の鬱憤を一気に爆発させてくれた場所でもあり、新しい自分が生まれた場所でもある。
とにかく狭い島だから、だいたいが馴染みの風景である。
案内役の片割れである女性は知らない。また美人過ぎて好みのタイプではなかったが、この感情は実にいい加減だ。
苦手な美人タイプでも、たぶん一日一緒にいたら、変わってしまい好きなタイプになる。
この能力は天性のものかも知れず感謝しかない。
でも、一部には誤解して、盛りのついた猪のように受け取る方もいた。
まあ、極端には間違っていないが。
中島敦の南洋日記を思い出した。
一部には差別的だと批判する野暮な人もいたりするが、あの人が使っていた土人は、けして差別的意味合いはなく、親しみある表現なのだ。
こうした感情というものは、経験と運も関係するかも知れない。