昨日は、父の一周忌であり、ふらつく頭ながら半分徹夜で実家を往復した。
いつものように、弟夫婦が段取りしてくれており、風来坊の私は身体だけ運んだだけだが。
法会の後の会食は、今や一族で最年長となった、私の第三のオヤジと隣席である。
幸いなことに、私には私が勝手に決めたオヤジが複数人いる。
その三番目のオヤジは、今や身近で健康な、唯一のオヤジではある。
その家は昔から芸術家を育てていて、面白い話を聞くことが出来る。
かつては名工世界一となり、弟子は人間国宝となった老婆も、一時期は居候していた。
昭和天皇を天ちゃんだかじいさん、岸信介を岸とか呼び捨てにする非常識な人だったらしく、祖母などの印象は悪かった。
その天皇陛下から歌を賜った婆さんの話は知っていたが、人間国宝となった人物の話は初めて耳にしたものもある。
最初は吉外扱いで、かなりの奇人であったらしい。
また、近所の左官の話が笑える。
腕のいい左官が、ある館の壁塗りを頼まれた。
出来に感激した眼鏡男の依頼人は、モノクロの版画を左官にプレゼントしたらしい。
が、左官にとっては飲めない汚い絵の版画など意味がない。
帰りに川に捨ててしまった。
それを聞いた友人が、涙を流さんばかりに驚いた。
慌てて川に戻った左官だったが、紙は見つからなかったらしい。
確かに、棟方の版画は安酒ほどの価値もなかったのだろう。
その他、マル秘情報的な話も聞いた。
頭はふらついたが、楽しい時間を過ごせた。