参勤交代の夢を見た記憶はあるが、忘れてしまったというのである。
他人様の夢覗き見の免許は期限切れで、今はない。
が、普段閻魔様とは呑み友達。
かつては、蜂蜜漬け生がきを食った間柄でもある。
そこを臭わしたら、今回限りで仮免許を出してもらえた。

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≪参勤交代……回船問屋騒動;百合の花は残った≫
伊達守村井育造に、江戸家老姥百合丞から早馬連絡があった。
十日以内に、お江戸に参勤交代だというのだ。
すでに三日が過ぎている。
急いで手配しても、実質五日。
早馬、飛脚ならギリギリなんとかなっても、外様とはいえ大大名。
仙台から江戸まで、ざっと六十里。
一人旅ならできるが、参勤交代となったら無理だ。
国家老・泉呑平介は思った。
急に味噌牛タンの用意もできない。
どうも蝦夷回船問屋について、殿がじきじきにお尋ねしたい模様。
姥百合丞は江戸家老の分際で、最近生意気である。
幕格とも、なにかうまいことをしているらしい。
と、悩んでいてもせんなきこと。
とにかく、急いで参勤交代準備に取りかかった。
途中、東北高校応援団のバスに乗せてもらったりしたが、とにかく期日前に江戸に着いた。
あ、これはオフレコである。


ところが、お江戸に着くとさような早馬は出していないときた。
むむっ。
さては南部藩の間者が、江戸家老に似せて書いたものなのか?
と、考えたが、時既に遅し。
勝手に藩を出たとの科で、即日改易、藩取り潰しとのお沙汰がくだった。
村井伊達守は歯ぎしりした。
帰る城もない。
裏では馬津派が動いていたらしい。
しかし、百合丞は残った。
これが、伊達回船問屋騒動のあらましである。

