【記憶】怖かったこと | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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生まれた時には、首にへその緒を巻き付けた仮死状態だったらしい。

つまり生まれた時から、死は身近にあった。

私の記憶にはっきり残ることで、あわやあちらの域に行っていたということは片手に余る。

が、今思えばその時は大変な状況だったのだろうが、本人である私はあまり生命の危機を感じなかった。


そんな能天気な私でも、即冷や汗をかいたことがある。


一つ目はシンガポールだった。

シンガポールには、セントーサという小さな島がある。

本島からは、船で5分程度の距離だ。

専用ケーブルカーで行くと、なかなかスリルが味わえる場所だ。


今ではいろんな遊技場もできており、東南アジア屈指の歓楽街ができている。

が、私が初めていった頃は、ヤシの木が生える砂浜とゴルフ場・戦争記念館と昆虫博物館くらいしかなかった。


そのゴルフ場でのことだ。

ゴルフ場には幾多の爬虫類がたむろしていたが、その中に1mを超えそうなトカゲがのしりのしりと我が物顔でゴルフボールを迷惑そうに見つめていた。

ボールがそいつのほうに行ったので、私と奴はにらめっこ状態となる。

先輩はあきらめろと言っていたが、ケチな私は目の前にあるボールが惜しい。


そのうち、にらめっこに飽きたのか、そ奴が目をそらした。

さて、ボール拾いだと近づいたとたん、そいつが全速力で私に向かってきた。

わずか1m程度とはいえ、彼らが怒るとなかなかの迫力である。

すごいスピードだった。


1m程度とはいえ、すぐ目の前に来るとかなりの迫力だった。

これは、かなり焦った。



しかし、怖さナンバー1は、ダントツでタイの店でのことだ。

友人に紹介されたキングコブラ料理屋。

身振り手振りから、品を選ぶからついてこいと言っているようだった。


一番若い私が、品定めに行く。

そこには2~3m四方の檻があり、材木を並べたような何十匹というキングコブラがうごめいていた。


と!

案内人が、無造作にその檻を開けたではないか。

中から、数匹の丸太が出てきた。

そのうちの1匹の眼は、思い出しただけで寒気がするほど無表情だった。


よくテレビなどで見る鎌首をもたげた姿ではなく、丸太に恐ろしく静かな目を付けた存在。

かつ、3匹くらいが足元に近づいてくる。


私は全く動けなかった。

見栄を張って平気な顔をしていたつもりだが、心の中は凍っていた。

眼と顎で品を選び、無理な作り笑いを作る。

店の親父は、本気で喜んでいるように見えた。


この経験は、置屋で巨漢に法外な金を要求されたり、レスラーのような3人に囲まれカツアゲされた時より怖かった。

大体このときは、そうなることを予測しての馬鹿な日本人観光客を気取った実験でもあった。

実は予測より安く済んでいる。




人間ならば、目の動きで次に起こるであろうだいたいのことは予想できる。

しかし、相手が蛇やらトカゲでは、この手は無意味だ。

キングコブラの眼。

なかなか間近では見られないことだろう。


デカかった。

私の腕よりははるかに太い丸太に、茶光するうろこがなんとも不気味であった。





そんなことがあった。