猪が出るようなところで生まれ育った山猿にとって、そこはあまりに眩しかった。
かつ、珈琲1杯が学食2回分以上という現実は、正直唖然とすることでもあった。
そこはハイカラな街並みで、田舎者である私には尻がムズムズする場所だったし、その時はす向かいに座っていた彼女は、あまりに眩しかった。
今考えると、自分をあまりに卑下していた。
いや、今のようなふてぶてしさも、あつかましさも、なんとかなるさのような、いい加減さもなかった。
つまり、単なるバカだった。
で、そのルビーの輝きを目の前にしながら、何もなく過ぎた。
数年後。
海外に長期滞在が決まった。
その時は、人生最期かもと思い、思いきって電話した。
なんと、名前を言う前に「アホ島くん?」と私の名前が出てきた。
これは驚いた。
思いきって「会いたい」と言った。
二つ返事でOKが帰ってくる。
その夜。
相手は大人だった。
もう彼女は人妻になっていた。
だから、私のよく知る女友達を連れて、銀座四丁目に立っていた。
だから、何もなかった。
はーあ。
ほとんどコメントをしないが、古い付き合いのブロガーさんが、懐かしい場所の記事を書いていた。
で、こんな妄想も浮かんできた。
還暦過ぎても、甘酸っぱい味は、まだ忘れないようだ。