新聞を見ておやっ!と思った。
そこには、その犯人の家を斜めから撮った写真が掲載されていたのだ。
私の家に非常に似ている。
主犯は逃走中らしい。
が、その犯人説明を読んでぶったまげた。
親の職業やら環境やらが、自分に瓜二つ。
大学の下宿探しは大変だった。
出身地を言う、とにかく断られた。
私が逆の立場だったら、同じことをするだろうなと思った。
年齢も姿格好も同じだし。
その時私は大学受験でそこには居なかったはずだが、相当な疑いをかけられているようだった。
いろんなことが重なって、犯人と非常に似た人物像が自分だと言うことは分かっていた。
交友関係からしても十分可能性がある。
あれの知識や経験もあるのは、ほぼ間違いない。
これは裏を取っている。
警察が目をつける気持ちも理解できた。
が、事実は違う。
会社員になっても、人事やらに変な連絡が入っていたことは後に知った。
だいたい、初任給の日に、東京でお世話になっていた親戚の家を訪ねたら、人事部長が待っていた。
多分、私への疑りからだろうな。
私が外出しているときに、その宿泊先に、危険な連中が集まっているとの連絡が入ったこともあった。
海外に行って、そうした暗いことは忘れていたが、常にモヤモヤはしてはいた。
そんなふうにして、およそ10年が過ぎた。
帰国した時、主犯の男が地元県警に自首してきたというニュースを聞いた。
p>やっと、私の疑惑が晴れた。
牢獄に入ったわけではないが、それに似た10年間だった。
偶然だろうが、その直後、比較的身近な人からゴメンナサイをきいた。
何の事?ととぼけたが、ずっと私を半信半疑で見ていたのだろうな。