【小説】軟禁ストーリーのできるまで | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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正面から、いや背中からもそれは近づいてきた。
どろどろに溶けた肌。
真っ黒に焼けただれた全身。
目のない顔。
迫ってくる
迫ってくる。



ギャーッ。




夢だった。
まただ。

もう、何回目になるだろう。
全身がびっしょりだ。



あれの効果は絶大だった。 わずか2発で、ついに猿が降伏した。
私は勝者の大統領としての名誉を得た。
世界が私にひれ伏したのだ。


が、どうしたことだ。
毎夜、毎夜、同じ夢にうなされる。




………………………………

それは、30万人を一瞬で失わされた連中の怨念です。
奴らの中に眠る怒りと悲しみが、その夢を産み出しているのです。



キンバレーは、そう言った。


それを消す手立てはないのか?



怒りを消せばよいのです。 連中は勤勉で優しい。
そこが弱点です。
自己を常に律し、反省します。
それを利用して、怒りを消せばよいでしょう。


………………………………

30万殺された者には、30万を殺す権利がある。

それが、彼らの考え方だった。
だから、30万を殺す前に、30万殺されていればよい。
それも非道なやり方で。




その昔、ミーンゴォ政府が作った噂があった。
自分たちがシャトーを逃げ出す前に殺害した数万の民を、猿に押し付けるものだった。
が、それは既に酷災連盟で否定されていた。

しかし、これは使えると思った。

あのでっち上げを事実にしよう。
ミーンゴォの殺した3万を30万にして、猿たちのせいにしよう。

奴らは優しい。
そんなことがあったと知ったら、自責の念にかられる。
怒りは私にではなく、自分の中に向けられる。

そうすれば、私は安らかな夜を迎えられるのだ。

……………………………………………………………………


軟禁では、猿と呼ばれた人たちは市民の絶大な歓迎を受けた。
彼らがシャトーに入ったことを聞き、シャトーから逃げていた農民たちが、続々と戻ってきた。

皆の顔に笑顔が戻った。
兵士たちも、久しぶりの安寧をむさぼった。


もちろん、兵士の中にははめをはずした者が何名かいた。
が、そうした者たちは厳しく罰っせられた。

軟禁の治安が回復され、しばらく平和な時を得た。

こうしたことは、戦後に公開されたメリケ情報部、あるいは軟禁大塾長メッサシミッタレのベンツ書簡を見ても明らかだ。


が、それらがメリケで情報公開されてからも、猿の中の仲間たちの力で報道を抑え、それを猿国庶民が知ることはなかった。


猿たちは、いまだに30万を殺したという自虐の歴史観の中にいる。





写真は、トンシュウ事件でミーンゴォが猿たちを虐殺したものを使った。
また、戦前に首切り匪族が行っていたやつも使ったし、婦女子を護衛した猿軍たちを撮影したアッチッチ新聞の画像を加工して、軍が強制連行する女性としたりもした。もちろん、その中にある笑顔は消した。


こうしてストーリーが出来上がった。




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ボケてしまったのだろうか。
最近、アッチッチ新聞のホントダヨイチは、写真を間違えたなどと口にしたらしい。
あれほど優秀だった仲間も、朦朧したようだ。


猿たちの中には、根強いアッチッチファンがいる。
だから、朦朧していてもホントダヨイチの言葉は微妙な結果を生み出すだろう。


その発言も、闇の中に葬ろう。


金星人にも、もうひと働きしてもらおう。