その2 ハバネロ教授
1980年代。1枚の写真が話題になった。
それは、蛇の背中に蝙蝠の翼を移植したものだった。
曰く、現代版ドラゴンの作製。私は神に近づいた。
この科学者はその奇妙な実験や理論から、学界からは遠ざけられる傾向にあったが、この写真が学界追放の決め手となった。
バチカンでもいい顔をしていないとの噂も流れた。
この研究者こそ、今や日本のマスコミでよく取り上げられるようになった、ヘイワード大学のハバネロ教授である。
ハバネロ教授は再生医療生体移植技術者ではあるが、生命科学や生物物理化学者でもなければ、細胞学者でもない。
ただし、いとこに再生医療現場のトップで働く医師がいるため、これを補助する学究とのことで国から予算を得ている。
同時に、東洋にはいい金づるがあった。
ヘイワード大学付属病院の教授で、イギリスのナチュレやドイツのゲンチャナヨなど科学誌にも載った(それが、蝙蝠の翼を付けた蛇の話であり、多くの批判にさらされた件は知らないようだ)というだけで、東洋のピーナッツ客は喜んで金を差し出してくる。
そのせいもあって、ハバネロは現在でもヘイワード大学関連施設で働いていられるのだった。
彼女も、そんな金の卵を産んでくれる天使であった。
ヘイワード大学のその施設は、マスター以上ならば無審査で、いや金さえ出せばいくらでも留学できるシステムである。
後に割烹着の天使と呼ばれることになる彼女には、十分な金を持つ親と、素晴らしい低能さがあった。
「面白いことができそうだ」
しかし、あいつもワルだな。こんなピーナッツをドクターにしてしまうとは。
ハバネロの口元が緩んだままである。
★これはフィクションです。
類似した事実とは、一切関係がありません。
よ。