少し前までは、女性のミトコンドリアからその先祖を考える人類古代生物学が盛んだった。
しかしこれでは、征服民族と被征服民族の差異がわからなかった。
最近の遺伝子工学の発達で、それまでは微量では検出できなかったY染色体の細かい情報もわかるようになってきている。
一般に戦争は男性が主導的立場であり、被征服民族の子孫には征服民族の遺伝子が残されていく。
Y染色体というのは男性にしかないが、これを細かく調べることにより、アフリカで生まれた人類が、いつ頃新しい形質を得て、どのように分かれていったのかもおよその見当がつくようになりつつある。
このような最新の科学では、日本人は約3万年前に他の民族と分かれて、独自の進化をしてきたようである。
かつ、非常に古いC1というグループというものも、世界で唯一持っている。
これは、大陸では当たり前であったと思われる先住民を殲滅することなく、比較的仲良く生活を共にしてきたことを暗示する。
下のグラフは、やじはり日本人に特有なD1b(以前はD2グループと呼ばれ、Wikipediaはまだ古い分類記述のままになっている)の民族別存在率である。
これを見ると分かるように、大陸や半島から渡ってきた人が日本人になったという話がファンダジーであることは明白だ。
仮にそうであっても、それは3万年以上昔の話であり、現在の漢人や朝鮮人とは全く関係がない。
日本人はむしろ、大陸から高山に住むようになったチベット人に近い。
これは、科学的には99.9999%以上の確率で正しいだろう。
仮に大陸や半島から渡ってきた人々が、弥生人の先祖であるならば、現在の大陸や半島人にも、D1bが残っていなければ理論的におかしい。
しかし、数百人、千人単位での調査結果では1%未満(統計では0%)である。
ということは、少なくとも現在の大陸にすむ漢人と朝鮮人が日本人の祖先ではありえない。
なお、グラフにはないが、満州人やモンゴル人とも異なっており、騎馬民族征服説は成立しない。
チベット人にはD1bと似たD1を持ている人の割合が多く、数万年以上昔は、チベット人と日本人(アイヌ人)は非常に近いか同一祖先の関係にあったことが推測できる。
余談だが、将来は白人、黒人、黄色人という定義が全く変わってしまう可能性がある。
これは遺伝子などの話が出る前から、インド人とヨーロッパ人が近縁関係にあることからも予想されてはいたことだが。
なお、失われた十部族説を信じたい方には残念だが、日ユ同祖論もわずか1万年くらい前まででは成り立たない。これは私にもちょっと残念。