昨日スーパーで、べらぼうに安いイワシを売っていたのである。
で、昨日のうちに調理していた。
家人は誰も箸をつけぬ。
で、今日は残りを胃に詰め込もうとした。
と、いささか冷たい視線に振り向くと、例のチビ太が草むらの中からこちらを凝視している。
立ち上がると、窓際までやって来て私に無言のプレッシャーをかけた。
気の弱い私は、平身低頭チビ太様にイワシを献上奉った。
が!
なんということだ。
チビ太様におかれては、ひと嗅ぎされた後、御右足にてしばし遊ばれただけで、ついに召し上がられることはなかった。
うーむ。
これが噂に聞く、猫またぎなる技だろうか。
次回からは、あまり安いものには、いささか足が遠退きそうである。
その2
先ほどのことである。
これまた、スイカの大特売をしていた。
なんと、となりにある1個1250円のものより、ふたまわり大きいのに、790円!
1ヶ月前なら3000円くらいしていたろう、超特大のものだ。
イワシで失敗していても、すぐ忘れてしまう。
あまりに安い。
で、そこにいた店員に訊いてみた。
なじょして、ごげん安かとね?
いやあ、訳ありでして……。
ほう。一度床に落としたものなのかな?
いや、おじいちゃん。これを床に落としたら、割れちゃいますよ。
おっ!なんと、そんな先のことまでは考えられなかった。この店員はただ者ではない。なかなかの優れ者とみた。
ほな。キタイ国で育てたやつで、中にうどん粉と砂糖水でも注射したやつかいな?
いや、おじいちゃん。キタイからここに運んでこんな値段で売ったら、赤字ですよ。 だいたい、うどん粉をスイカに注射するなんて面倒なことしませんて。 それに、もし注射するなら、サッカリンかチクロでしょう。
うむ!ますます鋭い。ちゃんと飛行機代の計算までしておったのか。
男の約束。他人には話さぬ。
ぜひ、理由を教えてたも。
実は、中がスカスカかも知れないんです。
なんと、この男、透視能力もあるのか。
畏れいった。
が、この透視術はまだ未完成だったようである。
内側に空洞はなく、パンパンであった。
イワシに肩を落とされたら、スイカに慰められた。
