【ある告白】某高校生日記を参考にした小説 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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あたしは、彼のことが嫌いだった。
確かに勉強はできるし、顔もイケメンちゃイケメンだけどさ。
でもさ、いっつもナヨナヨしててさ……。でも、それが逆にキュンとか言われて、いっつも違う女とつるんでた。
気分悪いんよね。勉強だけできて顔が良くたって、なんか好かんのよね。 男って感じないし。

でも、あんときから、あたしもちいと惚れちゃったみたい。

修学旅行に行ったんだ。
あたしにとっちゃ、初めての海外。
必要もないのに、しっかり勝負おぱんつ用意してね。
2日目の朝。バスは体育館みたいところに着いた。なーんかショボい建物で、こんなところを見学して何になるのさ、と思った。
日程表には歴史学習ってあったけど、どうみたって美術館じゃない。 昔の映画で見た古いボロっちい講堂ってやつだ。

がらんとしていた。
なぜか、朝礼の時みたいに並ばされた。
でも、立つんじゃなくて座れっていう。
キャーッ。こんな汚い床に座れっていうの?
みんながざわついた。
と、歴史の金村先生が大声を出した。サッサと座れって言ってる。
仕方なし、みんな座ったよ。

と、壇上におばあちゃんが現れた。

と、思ったら急に体を揺すりながら、何か言いながら大声で泣き出した。

あたしの耳には、I go,I go って聞こえた。
どこに行くんだろう?
あんまり大袈裟に泣き声を出すし、両手をブンブン振り回すから、少し笑ってしまった。
ううん。あたしだけじゃない。
周りからもクスクスが聞こえ出した。

と、また金村先生の声がこだました。

お前ら、全員土下座して謝れー!

はあ?テレビでもないのに土下座?
でも、なんで?

あたしは冗談かと思った。
が、また金村先生が怒鳴った。

聞こえないのかー!サッサと土下座しろー!

また、周りがざわつき始めた。

と、あいつが金村先生以上の声で言った。

先生。おかしいじゃねえかよ。理由もなく土下座なんて。

へーえ。あいつはあんな大声が出るんだ。先生に噛みつくこともできるんだ。
あたしの中の何かに火が点いた。


いいかあ。日本人はなあ、このおばあちゃんに大変な苦労をかけたんだ。何万回土下座したって足らないほどの苦労をかけてるんだ。

先生。俺たち今ここに来たばかりなのに、何をやったって言うんだよ。さっぱりわかんねえ。


いいか、お前らのおじいちゃんやひいおじいちゃんはな、このおばあちゃんたちに、口に出せないくらいの苦労をかけてるんだ。人生で一番輝く時に、奴隷のような生活をさせたんだ。

先生!
そりゃおかしい。俺たちのおじいちゃんか誰かしらないが、なんで俺たち高校生が、このおばあちゃんに謝らなくっちゃいけないのさ。しかも、土下座して。



あたしの中に点いた火が、一気に燃えあがった。