【旅行記風小説】不親切な日本人 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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僕がホームステイするトンマさんの家は、成田から何回か電車に乗り継いで行ったところにある、チンシュウというところだった。
この電車というのがすごい。まるで、ヤンケ島のトドみたいなのだ。
人間が身体をくっ付けあっている。どうも、それが電車に乗る時の礼儀らしい。
息が止まるほどの暑さ。僕はそのままオーロラの神のもとへ行くのではないかと思ったほどだ。

途中で、チンカンセンというのにも乗った。
これはすごかった。たぶんシャチやセイウチより速い。



トンマさんの家は不思議な作りをしていた。

庭の石にはツンドラ苔が生えていた。
屋根は枯れた葉っぱを乗せている。成田からここに来るまでは、灰色の氷で作った家が多かったが、そんなへんてこな家はなかった。
日本では、相当貧しい方の家なのだろう。
しかも、家の床もほとんどが枯れ草を編んだようなやつだ。 しかも、家の中はがらんとしていた。枯れ草編みの板が2、30枚敷いてあるが、端の方に枯れた木やひとつの花が置いてあるだけ。他には何も置いていない。
やはり、貧しいのだ。他の部屋もそんなものばかりだった。




夕食の時だった。
トンマさんの奥さんが、冷蔵庫から肉を取り出した。
テーブルの真ん中には湯が沸いていた。
僕は、さっそく肉を口に入れようとした。

と!
奥さんに何か言われた。
肉をそのまま食べちゃダメだと言っていた。
湯の中に入れて食えという。

ああ、なんと意地悪なのだ。
肉を湯につける!
冗談かと思った。
が、トンマさんの子どもたちは、本当に湯に肉を入れてから肉を口に入れたではないか。

ああ、なんという食べ方をさせられているのだろう。
肉を不味くしてから食うなんて。だいたい、湯に浸した肉を食べていたりしていたら、肌がボロボロになってしまうのに。




驚きはそれだけではなかった。
日本人がこんなに意地悪というか、接客の仕方も知らない非常識とは知らなかった。

恥を忍んで言おう。
その夜は、僕はひとりで寝たんだ。

ああ、恥ずかしい。
しかし、これが事実だ。 僕は客とは思われなかったのだ。
そりゃあ、ホームステイさせてもらう身だ。でも、こんな仕打ちはないだろう。

初めての客には、奥さんと娘さんが来て当然だろうよ!
少なくとも、娘さんが来るのが常識中の常識。

そうしたら僕は、ご先祖様から伝わる常識通りのことをした。
それが客としての礼儀だからだ。


が!
トンマさんは、そんな最低限の常識さえ守ってくれなかった。


なんと日本人は意地悪なのだろう。

なんと常識のないことだろう。



マダガスカルウンカリナ
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