そこで、自分では常識かと考えていたことから思わぬ結果になったことや、ついやってしまった勘違いをまとめてみよう。
常識などというものは、正義とか事実とかいう言葉同様、常に変化し絶対というものなどはない。
①朝の9時頃だった。
銀行本店に行く必要があり、私はハンドルを握った。
が、しばらくして私は警告と罰金を払うことになる。
スピード違反ではない。
【朝なのに、1人だけで車を市内に入れた】からだ。
これは常識ではなく、法令違反であった。
その国では、市内の交通混雑などを緩和するために、ある時間帯は市内にドライバーだけの車両が入ることを許していない。
日本だと考えられないだろうが。
②これもまた、車の話。
私は車の運転は下手くそだから、時速120キロくらいでノロノロ走っていた。
と、直ぐ後ろにごっつい車がピッタリついた。
仕方なく、150キロくらいまでアクセルを踏み込む。
が、まだぶつかりそうになるくらいくっついてくる。
私は左側車線にいる。右側追い越し車線はガラガラだ。
嫌がらせだ!
私は冷や汗を書きながら、またアクセルを踏み込む。180キロくらいだろうか。
下手っぴドライバーの私には、もう限界スピードだ。
が、まだ、ついてくる。
で、閃いた。
私は、右側車線を追い越し車線とばかり勘違いしていたことを。
そうだ。ここは左側車線が追い越し車線。私はずっと追い越し車線で200キロ以下のノロノロ亀走行をしていたのだと。
慎重に右側車線に変更した。
と、先ほどから後ろについてきた車が、飛ぶように左側をすり抜けて行った。
時速200キロをはるかに超えているのではないかと、あっという間に小さくなって行く車を見て思った。
しかしなあ、私も勘違いしたのは悪かったが、ガラガラの右側車線から追い抜いてくれたっていいようなものを。
いや、あのドライバーは法をしっかり守っていたのだ。追い越しは左側車線という。
自分の過ちを棚に上げてはなるまい。
ドライバーは、硬い車と同じ、硬い民族だったに違いない。
③ちょっとした契約が終わって帰ろうとする時だった。
そこの社長が車代だかなんだか知らないが、分厚い封筒を持ってきた。入り口から中身が飛び出している。
日本でいうところの、福沢さんのお菓子だ。
横どころか縦に立つ。
私は、即返した。
相手は何か勘違いしたようだ。
これが精一杯ですみたいことを言っている。
いや、違う。こんなものは受け取れないと、押し問答の末断った。
しばらくすると私は、【常識知らず】の人間となった。
そうか。ということはここで【常識ある人というのは……】。
そんな考えに、少し羽が生えた。
④ひどく怒っていた。
最初は何にイラついているのか理解ができなかった。
さる方が、某所から借りたものがもう必要もないのにそのままだったので、私は気をきかせたつもりであるべき場所に返したのだった。
が!これが余計なお世話だった。
借りたものを返すというのは、ものによっては不要らしい。
私は非常識にも、【借りたものを返してしまった】人でなしである。
なのだろうな。
⑤従業員が長い列を作って、タイムカードを押す順番を待っている。
と、事務所の女性が列を無視して先頭に割り込みカチンとタイムカードを押した。
従業員たちは何も言わない。それが当たり前のようだ。いや、少し怖がってさえいるように見えた。
その女性事務社員は、肩で風を切っている。
それを見た若い私は、叱った。
ちゃんと並べと。
が、これは私が非常識な人間だったようだ。
その女性はクラスが上らしい。
並んでいる従業員とはレベルが違うんだとか。
知らんがな、そんなこつ。
日本とはなんと平等であることよ。
列には階級だかなんだかに無関係に並ぶのが当たり前と考えていた私は、どうしようもない非常識な人間であったようだ。
⑥一緒に入ろうと誘った。
が、入れないと言う。
なんで、単なるデパートだろうよ。
自分の国の建物に、何で入れないの?
私は、非常識きわまりないことを言ってしまった。
その国には当時、外国人しか入れない、買えない店があった。
⑦その地方では宗教的な問題から、土曜日になると、私が泊まっていた宿はもちろん、市内の多くの店がシャッターを下ろした。
最初の頃は、近場に穴場のレストランがあることを知らなかったから、週末になるとパスポートを持って隣の国に飯を食べに行ったり、100キロくらい離れた観光地に行ったりしていた。
⑧最高の精力剤。 ぜひ、行きましょうよ。
せっかくのお誘いだが、丁重に断った。
某所でのキングコブラとクロコダイル料理は旨かった。
が、私にはミッキーマウスは食べ物の範疇に入らない。
ましてや、生呑みなど。
私は礼儀知らずの非常識人間であった。
⑨えっ?お持ち帰りしない?
非常識な!
そんな言葉が聞こえてきそうだった。
でも若い私は、自前で別のところで心と身体の帳尻は合わせたが。
場所によっては、断ることは勇気のいることだ。
今なら言えるが、しばらく付き合いのあった同年輩のボンボン社長が億単位騙されてそこを去る時には、私も常識を守って、というか同じ仲間として彼の好意を無にはしなかった。
今だと、なかなかうるさいことになるのだろうなあ。
線路脇に群落をなした、ツボミオオバコ。
