これは全くの推理です。
………………………………………………
クアラルンプールを飛び立ったB777機は、離陸約20分後にシートベルトフリーのチャイムが鳴り、何人かがトイレ向かった。
不思議なことに、トイレに同時に2人の男が入った。
1人の男はトイレ天井を開け、そこから機械室に這う。 もう1人はトイレに残ったままだ。
離陸約50分後。
男は時限装置のセットを終え、リード線を挟みニッパーを握った。 緊急救難信号用ケーブルである。
約1時間後。
男がトイレに戻ってきた。
機がやや揺れたのをみはからって、1人目がトイレから出た。
その男が、中に残っている男にトイレの外からなにやら声をかけた。
中の男もトイレから出て、時間を少しずらして席に戻る。
席に着いた2人は、手持ち鞄から白いリュックサックのようなものを取りだし、背負った。
次の瞬間だった。
緊急脱出ノブを男が回したのだ。
ドンという音とともにドアが外れ、暗闇の中に消えていった。
同時に、機内から空気が夜空の中に流れ出す。
何人かが暗闇の中に吸い込まれていった。
男2人は、リュックサックを背負ったまま、闇の中に消えた。
しばらくすると、軽い振動があった。
機が大きく傾く。
機長はすぐに緊急救難信号を出し、近くのホーチミンに連絡を取ろうとした。
が、全く反応しない。
機長は、1万マイルフライト以上経験のあるベテランである。
切りもみに近い中、なんとか機を建て直し、高度を出来る限り下げた。
ドアが外れた連絡を受けて、すぐに高度を落としたのである。
こうしないと、酸素マスクを付けても、低温による死者さえ出かねなかったからだ。
計器の半分が使えない。
GPSもやられた。
機長は副機長に星の目黙視確認を命じた。
とにかく戻らねば。
機長は大きくUターンし、クアラルンプールを目指す。
あそこまで行けばなんとかなる。
機長は自分を元気づけた。
海上を監視していた副機長から、陸部に入った報告があった。
よし、あと少しだ頑張れ。
自分を叱咤する。
が、目指す街明かりが見えぬまま、しばらくしてまた海に出てしまっていた。
と、その時だった。
強烈な爆風がコックピットを襲った。
クアラルンプールまで600キロ、ペナンまでは300キロの沖合いだった。