オーパーツというのは、そこにあってはいけないようなものを意味する。
例えば、縄文人の遺体が北海道・大雪山の頂上付近の洞窟の中で氷付けになって発見されたとしよう。
この縄文人が、腕時計をしていた。
まあ、そんな類いのものだ。SF小説などにはよく出てくるが、歴史ドラマや映画にそういったものがあっても、意外に見落としてしまう。
特に、自国ではない国の文化や習俗、その中でも食べ物に関しては、ついつい現在のイメージで見てしまいがちで、とんでもない間違い、いわばオーパーツがあるにも拘わらず気付かないことが多々ある。
さて、そんな例を挙げてみよう。以下の文章には、仮に小説とするにしても決定的な誤り、オーパーツが出てくる。
皆さんは、どこがおかしいかお分かりだろうか。
答えは、……。
いや、この後に書くことにして、少し考えてみましょう。
★江戸時代初期、伊達藩の支倉常長が、ローマを訪れた。
ここでの食事の会話。
「この赤い水が酒と申されるか?」
「はい。ワインと言いまして、人を天国へ誘う美酒にございます」
「赤い酒とは、何やら恐ろし気な。で、この赤いうどんは何じゃ?」
「スパゲティ・ナポリタンといい、昔からのこの国ではよく食べているものでございます」
「うーむ。この国では、やたら赤い食い物や飲み物が多いのう」
★ 豊臣秀吉の天下。加藤清正の朝鮮での食事の時。
「ほう、これが噂に聞く朝鮮人参酒か」
「ははーっ。三年にして三つ葉、五年にして四つ葉、七年目にして初めてその根を掘り起こしたる、世の珍薬でござります」
「で、この赤いものは?」
「ははーっ。辛子明太子と申します。鱈の卵に唐辛子をまぶした珍味。酒の肴に最適でございます」
「ほう。これは実に旨い。先に出たキムチも旨かったが、これは格別じゃ」
★水戸黄門裏話。
水戸黄門は当時屈指の知識人であり、隠居後は、日本史の研究にいそしみ『大日本史』の編纂は有名だ。
久慈の西山荘には、清国の料理人を呼び、ラーメンや餃子、麻婆豆腐などを最初に食べた日本人と言われている。
★百年戦争(西暦1337年~1453年)が終わった時の、あるイギリス貴族のつぶやき。
ああ、我が祖父の子供の頃に始まりし戦いも、やっと終わりを告げた。
初めて平穏な夕げの時を迎えられるのだ。
私は神に感謝の祈りを捧げた。
わずか鱈1切れではあるが、私にはかけがえのない夕げとなろう。
その切り身を口に運ぶフォークを持つ手が、嬉しさに震えた。
ワインもティーもない。しかし、私は幸せに酔うのだった。
※最後のやつは、ちいと難しいか?