それは1stロットから100万個のチップをオーダーするという、まさに博徒の世界だった。
実は、そのゲーム機は世界初ではなかった。
数ヶ月前には、とあるメーカーが当時世界初となるゲーム機を販売していたからだ。
が、その1stロットは数千台単位。二番手の花札屋がそれを発売するときでさえ、まだ数万単位でしかなかったのだ。
チップ生産を受けた大手電子部品メーカーにとっても、年間売上を大きく左右する発注額だった。
それゆえ花札屋からの要求も厳しく、かなりのコストダウンを迫られる。
花札屋は、本体での儲けは期待していなかった。
次々と出すソフトでの利益に期待したのである。
博打は当たった。
都・久世橋の花札屋が、世界でも指折りの優良企業となったのである。
初回100万個。
失敗したなら、倒産は確実だった。
が、天は勇気ある賭けに微笑んだ。
任天堂先代が亡くなられたようだ。
ご冥福をお祈りしたい。