
最近、私が昼には外出してしまうのを占い師に聞いたか、雨宿りの為かは分からないが、権之介が朝早くからガラス窓に貼りついている。
こっちも忙しい時があるから、まずはそのへんにあるものを献上申し上げるのだが、最近はなかなか注文がうるさい。
今朝などは、肉入りシューマイの残りを寄進さしあげたが、見向きもしない。
いや、ひと舐めしてそっぽを向いたかと思うと、また敷居際で首を伸ばす。
不思議なことに敷居から中には入らない。おそらくニコチンで張り巡らした、見えぬ結界の存在を知っているのだろう。
陰陽道にも、かなり通じていらっしゃるようだ。
が、えらく好みが激しくなってきており、上にさぶらふ五位様には困ったものだ。
以前なら、息子が投げたパンの耳さえ食らいつきあそばされたが、今は“肉、肉、生肉だ、ジシイ”とテレパシーを送ってくる。
元来臆病者の私など、ははーっと三歩後退りし、ただただご下命に従うばかりなのである。
五位様付きジジイの教育が間違ったのかも知れないと、しばし反省した朝であった。
しかし、なんであの肉入りシューマイはご賞味あそばされなかったのか?
やはり、特売には特売の理由があったのやら。
しかし、五位様はご自宅では、いかなる食を摂られているのだろう。
ジジイをからかいに来てくれるのはまんざらではないが、いささか気になるのであった。
