この春小学校に上がったのだろう。 ピンクのカーディガンに大きく光るランドセルを背負った女の子が、肩を揺らしながら私とは反対側の歩道を歩いていた。
曇った顔の中に、何かが燃えている目であるようにも感じられた。
まだ家で遊んでいたいのだろうな、とも思った。
と、彼女が声を張り上げた。
「分かってんだろうな。自分のしたこと……。責任持てよ!」
声の先20メートルくらいのところに、やはりピカピカランドセルの男の子がいた。
背中しか見えないが、目線は空の向こうにあるようだ。
少し寒くなった。
私が責任なる言葉を知ったのは、多分小学高学年になってからだ。
また、息子以外に「責任持てよ」なることを言ったことがあったろうか。
いや、責任持ってやってね、責任ある行動を、くらいは言ってるだろう。
女の子はまだ何か叫んでいるようだが、雑踏の中に消えていき、すでに言葉としては聞き取れない。
朝から、聞いてはいけない言葉を聞いてしまった気分になったのだった。