
お昼頃のことである。
「ああ、新緑が眩しい。やっぱり春の緑は清々しいなあ」と心の中で呟いたら、森の神からクレームがついた。
「汝、春を新緑と決めつけるなかれ」
ふむ?
春は新緑に決まっとるがなという言葉を吐こうとした矢先、いや目先に、確かに新緑ではない新芽があって、「春は新赤に決まっとる」と言われた。
小心者の私は、その言葉に素直に従うしかなかったのである。
が、確かに新赤は存在した。







「ははーっ、参りました。春は新赤に相違ございません」
と額ずくと、
「馬っ鹿もーん。春は新黄であろうが。ボケジシイ」
と無い毛を引っ張られた。


「御意。春は新黄にて候」
私はまたまた地面に額をすりつける。
と、今度は尻を蹴られた。
「このトンチキ野郎のオタンコナス。春は新黒じゃ」


そんな私を、猿田彦がうちわを扇ぎながら笑っている。
