橋の下にて | しま爺の平成夜話+野草生活日記

しま爺の平成夜話+野草生活日記

世間を少しばかり斜めから見てしまうしま爺さんの短編小説や随筆集などなど
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朝からぽかぽかとした陽気で、僕は久しぶりに昼までまどろみの中にあった。
さて、飯の用意でもしよう。
僕は昨日見つけた新しい鍋に、畦道で摘んできたアブラナの芽を目一杯いれる。

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いいにおいだ。
菜種油のにおいが腹をくすぐった。



あれも食べられるかも知れないな。

僕は膨らんだネコヤナギの花を思い浮かべた。



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今度入れてみよう。

鍋がグツグツいい始めた。
うっすらとうまそうな油が浮いてきている。



と、僕は背中に視線を感じた。





「食い欠けで悪いけど、食べるかい?」


僕と同い年か、少し年輩の男が声をかけてきた。


「ああ、すまないね」


と答えて、僕は自分自身に驚いた。


人と言葉を交わすのは久しぶりなのに、また、初めての相手なのに、僕は自然にそのパンを受け取っていた。



「飲みかけで悪いが、これもいる?」


まるで旧知のようなその口調に、僕はまた「ありがたいなあ」と、何年ぶりかの笑みまで漏らして、それを手にしていた。





不思議な1日だった。





その初老の男は、時に道端に腹這いになりながら、写真を撮っているようだった。




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遠くでホトトギスの声がしている。


僕は、ゆっくりとパンを口に運んだ。




ひどく薬臭く粉っぽかったせいか、急に咳こんだ。



春霞。


遠くの景色がぼやけている。





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