しとねより首のみこそ出だしけれ。つとめてよりささなど給ひたき心地なれど、さあるは意地汚しとなむ思ひて、あるやなしやの話など書き連ねたり。
さあるほどに裏庭のざわめきて大なる山鳥のがあがあと鳴きつるを聞けり。
いさ、裏庭にははじかみの大なるがありしぞと覚えて、金桶を持ちて行きぬ。

大なるはじかみの四五二十ほどありて、枝曲がりてまさに折れんとす有様なり。これを七つ八つなどもぎて今宵の肴にとなむ思ひける。

隣なる稚児の紅葉をみれば、まだくちなし黄はだ色にて落ち栗百合の襲にも似て候ふ。

陽のあたるる表なるは、金糸の如く燃へ候ふ。

こは東人のむさ苦しきが耳坐滋にも似たりとなむ思ひ侍りける。
はじかみに はぢをかみしむ ゆふべかな