
ルルルルル、ルルルルル、ルルルルル。
ルルルルル。
ルルルルル、ルルルルル、ルルルルル、ルルルルル、ルルルルル。
呼び出し音が3回鳴って切れ、また1回鳴って切れたのち、もう一度5回鳴った。
私は、次のコール3回目にPCボタンを押す。
はい、ワイナリーでございます。
ああ、わしだ。
B国領事の声だ。
毎度ご贔屓に預かり、光栄でございます。
ご注文でしょうか。
うん。
白ワインの若いやつを、3本用意してくれ。
あっ、それと黒ビール1本。この間のやつを気に入ったのがいた。
ありがとうございます。
で、お届けはいつに致しましょうか。
そうだな。
E国大使歓迎会が10時に終わるから、9時57分に裏門に着けてくれ。
あとは、お前に任せる。
ありがとうございます。
では、若い白ワイン3本、黒ビール1本、確かにお持ち致します。
うん。頼んだぞ。
まあ、敢えて言う必要もなかろうが、大切なお客様だ。そそうのないように。
かしこまりました。
ルルルルル、ルルルルル、ルルルルル……。
私は、ワインに電話をかけ始めた。
私の名前はワイナリー。
最高の酒で接待をする、最高機密機関の一員である。