誰かの為のエッセイ かな? | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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「いやあ、朝から汗が止まらんですのし」


「はあ、今日も暑くなりそうですの~し」



こんな会話を聞くと、私は小津監督の『東京物語』を思い出す。


小津監督の下からのカメラワーク、つまり子ども目線でのアングルは、後に続く黒澤明など日本の映画監督たちだけでなく、フランスなど、欧米のエンターテイメント産業全体にも大きな影響を与えている。



この『東京物語』の最後のところで出てくる言葉が、長年連れ添った妻に旅立たれたあとの男(笠智衆)の言葉「今日も暑くなりそうだ」なのである。



瀬戸内の、きらめく海。開けっぴろげの青空に、ギラリ輝く太陽。



私はこの場面を思い出すたび、涙ぐんでしまう。



もし、涙早出し大会のようなものがあったなら、多分私はいい成績をあげられるだろう。


パブロフの犬。
このシーンを思い出せばよいからだ。




なぜ、私がこのシーンに涙してしまうのか。



たぶん、自分の考える、現実社会の中での理想的な人の在り方みたいなものを見、共鳴し、映像では飄々としてはいるものの、何か熱いものを感じているであろう、笠智衆演ずる男になってしまっているからだろう。




『東京物語』


暑くなると、思い出す。