確か前回は“火(ほ)”だった気がしますから、今日は“ま”に致します。
maと言ったなら、古代語共通の“母”の意味で、実は“お母さん”もその流れをくむものだ、ということは以前記事にしていますので、今回は、別のmaについて考えていきましょう。
その代表が“目”または、“見る”に関連する言葉でしょう。
人の能力と言葉の発展を考えますと、副詞や形容詞、あるいは助動詞よりは動詞、さらにその動詞よりは名詞が先に生まれたであろうと思われます。
というのは、人がこの世に生を受ける、つまり受精から出産までの過程において、受精卵は人が進化してきた歴史を、わずか10ヶ月の間に再現します。
どういうことかと言いますと、卵子、精子といった、生命と呼ぶには不十分なたんぱく質複合体が、接合することにより、それ自体では増殖できなかったものが、あっという間に分割・増殖していきます。
やがて卵に脊椎のようなものが形成され、しだいに魚のようになり、やがてトカゲにも似た形となっていくわけです。
最後には、それまで持っていた長い尾が消化され、人らしい姿になります。
これが、人が進化でたどった何億年の過程なのです。
私は、言葉の発達も、これに似ているだろうと考えています。
簡単な名詞から、徐々に複雑な言葉への変化です。
つまり、赤ちゃん言葉と言われるものから、しだいに普通の言葉へと発達したのではないか、というわけです。
こんな考え方をすると、“見る”も、もともとは“目”から変化した言葉だろうと察しがつきます。
まなこ、まぶた、まつげという言葉が残っているように、目は昔“ma”であった可能性があります。
では、各言語の目に関する音を見てみましょう。
★ローマ字は綴りではありません。およその音です。
maa
両目、見る(古エジプト)
mata
目 (マレー)
maka
目(ハワイ)
matsa
目(台湾パイワン)
ming
目(チベット)
mirar
見る(スペイン)
mirar
見る(ポルトガル)
◆m→n音変化?
nun
目(朝鮮)
nez
見る(マジャール)
nayana
目(サンスクリット)
nyaui
目(ケチュア)
ni,nau
見る(古エジプト)
◆m→b→v変化?
vid
見つける(サンスクリット)
video
見る(ラテン)
ve
視力(フランス)
vwa:r
見る(フランス)
vyu:
視界(英)
ver
見る(スペイン)
さらに変化させて、英語のeye やフランス語yuにもなるが、疲れたあ。
今日はこれまで。

写真〔モジリアーニ 1918 Two little girl の一部をコピー〕