そうだんべ。
こうした語尾に“んべ”がつく言い方は、北関東から南東北、あるいは山陰などの一部でもあったかと思います。
おおむね学会の説は、古い日本語“べし”が短縮化した形で今に残っている、というものです。
たぶん、これは正しいでしょう。
ところで、今は絶滅の危機に瀕している言葉に、満州語があります。
満州語は、日本語やトルコ語、あるいはモンゴル語、朝鮮語と似たような言葉の並びをしています。
これらをアルタイ語などと呼び、かの有名な漢学者である藤堂明保氏は、日本語はアルタイ語だと明言しています。
ところで、満州語には面白い特徴があります。
ほとんどの動詞語尾は mbi(ンビ) で終わるのです。
例えば、hatambi(嫌う)、mayambi(消える)、forimbi(叩く)などです。
言葉は変化します。特に名詞の変化は激しく、わずか10年でさえ、大きく変わります。
が、動詞はそれほど変化しません。
例えば、1000年くらい昔の文章を見ても、さほど変化がなく、だいたいは理解できます。
なお、古い動詞は“ふ”などで終わるのが多く見られます。
言ふ、食ぶ、訪ふ……。
現在方言で残る“べ”“んべ”は、助動詞“べし”の名残であると言われますが、こうした動詞の語尾の一部という考え方もできなくはありません。
そう考えますと、満州語の動詞語尾 mbiとの関係も疑りたくなります。
ちなみに、日本語の動詞語尾には、“見ゆ”“消ゆ”のように、“ゆ”で終わるものもあります。
これは、モンゴル語、トルコ語などの古い言葉の動詞語尾に関係がありそうです。
古い日本語の動詞は、主に四段活用ですが、上一段、あるいは下二段などの活用変化によって分けられる動詞の多様性から、日本語の成り立ちを推測することができそうです。