お互い会えなくなっちまったなあ。
とは、昨日友人の奥様の通夜の帰りのことだ。
相手は、やはり同期ながら、今や一般社会的には雲の上に近い人。
ただ、アホ爺はそんなことはどうでもよいから(だからダメオヤジなのだが、この性格は治らないし、直そうとも思わない。家族には悪いけれども)、ひょいひょいと話かけたら、とんでもない方向に話が進んだ。
まあ、その話は割愛するが、はたから見たら雲の上の人が、野暮ったい掃除爺にいろいろ訊いてくる。
で、会社ではトロン爺だが、訊かれた内容がなかなか面白いので、目を光らせて答える。と、また質問するから、ある意味オタクしか知らない、ローカルなことも含め答える。
ずいぶん質問攻めにあったが、彼が今、そうしたことを知りたくなった気持ちも十分にわかる。
後でまとめて、メールでもしておこう。
と、たまたま、近くでそれを聞いていた、グループ系のある知人が“しま爺さんて、何者?”
ほら、またこれですわい。
社会人としては失格のボケ爺にとって、よくある質問だわな。
で、実は私が若い頃は、海外の鉄砲玉役をしていたことなどを話した。
相手の驚いたのなんの。
実は彼は海外の仕事にも深く関わっているのだが、私は国内にじーっとへばりついている、昔からの掃除爺さんだと思っていたらしい。
まあ、それも仕方ないだろう。
鳩が豆鉄砲を食らった顔である。
その彼と、本来なら掃除爺など話すはおろか、近づくこともできないかも知れない知人に近くの駅まで送ってもらった。
若い彼と二人で途中駅まで一緒だったが、その間中、今度は彼からの質問攻め。
もっとも、訊いてきた内容が、私にとっても興味深いことだったから、話が弾む。
しかし、彼の顔といったら笑ってしまうほど輝いていましたなあ。
というか、“しま爺さんの目が、そんなに光っているの、初めて見ました。いやあ、僕はしま爺さんのことを全く知らなかったことを知りました。今日は勉強になりました”
とか言いながら、まだ首を傾げたままの彼と別れた。
私は自分が本物のボケ爺に成れなかったことに少し反省をこめながら、駅を降りた。
話を戻そう。
事情や成り行きを話すと長くなるが、妻を突然失った友人の顔には、憔悴の色がありありと現れていた。
そりゃそうだろう。
あまりにも運命とは不思議なものだ。
また、残酷だ。
ある程度のことを知っている者は、あまり口には出さないが、みなそう思っている。
先に話た彼も含め、“偉く”なると、いろいろと大変なのである。
やはり私は、サラリーマンには向いていないようだ。