古端渓といったら、天文学的な価格だ。
これは新端渓だが、石眼がここまであるものを、私は見たことがない。
外国人専用の店ではなく、上海・淮海路のこじんまりした店にある、鍵の掛かった陳列品だった。
値段は、ネズミーランド大晦日特別料金の、一家族数時間分。
しかし、当時のあちらの国家首席の、表向きの月給よりは高かったろう。
硯と言えば、アンホイ(安徽)省歙県の硯が当代一であろう。
日中国交の際、田中角栄がプレゼントされたのは、この歙県の硯である。
品では角栄さんの硯に負ける。
が、希少性はこれのが上だなどと、一人馬鹿まるだし、ほら吹き爺の鼻息は荒い。
ちなみにこれは、いろんなものが異次元空間へと消えてしまう、不思議な我が家には置いていない。


日中国交が始まったばかりの30年近く前、日本持ち帰った当時、ある好事家が70万(今なら二倍以上の価値?)なら買うぞ、と言った。
原価自体は、その十分の一にも満たない。
が、これは、当時駐在員自殺率最高と言われた上海で、文字通り泥まみれになりながら探し得たものである。
それの価値を考えると、まだまだ安い。
おまけ。
まだ使えずにいる墨。
