その鮮やかな紅(くれない)色の柿の葉には、水に洗われたとはいえ、女文字と分かる歌が書かれていた。
松とても 水にあわねば いつの日か 色もつかずに 枯るるとぞかや
そのまま詠めば、いくら常緑の松の木でも、水を与えられなければ、紅葉もせずに枯れていっていまうということですね、という程度の意味である。
が、男にはそれが、掛詞を使った恋の歌であることが分かった。
いくら待ったところで、ずっとあなたを見ずに会えなければ、いつの日にか若い体も心も老いて、やがて人の噂にものぼらなくなり、やがて消えていく定なのですね。
男は、冷えきっていたからだが熱を帯びてくるのを感じた。
この歌を詠んだのは、どんな女なのだろう。一度でいい、この目で見て見たい。
つづく