小説:双詩創愛 その2 | しま爺の平成夜話+野草生活日記

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その鮮やかな紅(くれない)色の柿の葉には、水に洗われたとはいえ、女文字と分かる歌が書かれていた。 


松とても 水にあわねば いつの日か 色もつかずに 枯るるとぞかや 




そのまま詠めば、いくら常緑の松の木でも、水を与えられなければ、紅葉もせずに枯れていっていまうということですね、という程度の意味である。





が、男にはそれが、掛詞を使った恋の歌であることが分かった。 



いくら待ったところで、ずっとあなたを見ずに会えなければ、いつの日にか若い体も心も老いて、やがて人の噂にものぼらなくなり、やがて消えていく定なのですね。 



男は、冷えきっていたからだが熱を帯びてくるのを感じた。 

この歌を詠んだのは、どんな女なのだろう。一度でいい、この目で見て見たい。 



           つづく