小説:しかし、事実に近い泣ける話こっちへ来てくんなんしょ。 母が言った。 そこには、黒縁の写真が二枚置かれていた。 一枚は父の、一枚は母の、おそらく六十代の写真に細工をし、もともと品がある顔だちの母の顔を、一層落ち着きあるものにしたものだった。 それがらな。 と言って母は、床柱の中を開けて、四角い束を見せた。 おらがあっちへ行ったとき、長男がビタ1文出せねえじゃあ外聞わりぃがらな。 私は、涙を抑えるのがやっとだった。