
今日は早退に近い。
とは言っても、こんな時刻ですがね。
昔なら、今日、明日はお泊まりコース。
数年前は、9月以降、馬車がカボチャになる前に家に帰れるなんざ、滅多にありませんでした。
おかげで、女ができたとか、遊びほうけてるとか・・・。
まあ、いろいろありましたわいな。
かつてある方から貰いうけた、桐箱銘入りの茶碗が、自由落下加速度以上のスピードで生まれ故郷に戻ったこともありました。
いやあ、この時ゃ緑紙用意しちゃいそうになりましたわい。
ぞの時代考えりゃ、こんな時刻に電車待つなんざ、夢のようではあるんですが・・・。
おっと、あぶない、あぶない。
最近とみに得意になった愚痴がでそうだ。
本題に入ろうぞ。
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私が、まだ小学生だった頃、歩いて十分とかからない林の中に、田舎でも、あまり見られないようなあばら家があった。
そこには、ガリガリに痩せた浅黒い顔の中年男と、小太りで色白の女が住んでいた。
窓らしい窓がなく、板ぶき、土壁に沿って、植木鉢を大きくしたようなかめが並んでいた。
そこからは、子どもの私たちには我慢できない独特の臭いがしていた。
おそらく、あれはキムチであったのだろう。
いま思うに、彼らは半島から連れてこられ、母国に帰れず異国の地で生を全うせざるをえなくなった人たちだったのだろう。
私が今、こうして携帯など打てるのは、その家の男がいたからであるらしい。
なんでも、よちよち歩きだった私が、囲炉裏の中へ落ち込む寸手のところを、男が救ってくれたらしい。
小さい時からそんな話を聞いていたから、子どもばかりか大人も敬遠がちだったその家あたりを、私は弟とよく遊んだ。
ひょっとしたら、そこでキムチを食べたことがあったのかもしれない。
しかし、不思議なことに、そこのおばさんと話しをした記憶はあっても、どうしても男との会話を思い出すことができない。
さらに不思議なのは、なぜ彼らが我が家によくやって来ていたかだ。
ところで、私は彼らの作ったキムチを食べていたかどうかはさておき、滅法辛いものが好きである。
一昨年前には、ハバネロを栽培した。

しかし、これは失敗だった。実はみごとになり、多くの収穫があったのだが、辛すぎて食べられない。
それに、単に辛いというだけで、辛さの中にある甘味、旨味がほとんどない。
辛い食べ物で美味いのは、やはりトム・ヤム・クンではないだろうか。
世界三大スープとして名高いこのタイの代表料理には、辛さのみならず、酸味、苦味、こく、そして隠された甘味が宿っている。
旅行者には難しいが、このスープの本当の美味さを知りたいなら、観光ガイドに載っているような店は、あまりおすすめしない。
というのは、西洋人や日本人向けに、上品でくせのない、あっさりとしたものに変えてしまっていることが多いからだ。
これぞ、トム・ヤム・クンというものを味わいたいなら、地元の人がちょっと無理をして食べに行く、ローカルのトップクラスのタイ料理専門店が良い。
こく、深みが全然違う。
高級レストランのものとは別の食べ物と思ってしまうくらいである。
私は「趣味は?」と聞かれたら、まよわず“料理”と答えることにしているが、トム・ヤム・クンは、何度かチャレンジしたが、どうしても真似できない強敵である。
★補足
私の得意料理は、妻の趣味である、冷蔵庫に長らく展示した商材の有効活用が主であり、料理そのものの為に、浅草や西船に出ることがなくなってしまっている。
ざんねんじゃ