その2

 屋根から落ちた怪我のこと 

大変な事故ではあったが、僕は奇跡的な回復をみせ、事故から10日もしたら歩けるようになってしまった。

看護婦さんに歩きたいと言ったら「10日も寝ていたのに、歩ける訳ない」と言われたが、子供だからだろうか、僕は何の苦労もせず、すぐ歩いてしまった。

病室を出て廊下を歩いていると、驚いたように、珍しそうに誰もが、僕を見る。

「何処の病室の子」と聞かれるので「3号室です」と言うと、皆びっくりしたような顔して、「あの救急車で運ばれてきた子なの」と・・・とにかく驚く。

あの子はもう駄目だと、入院患者たちは噂していたらしい。

昔の学校のような、木造2階建ての小さな外科病院で入院患者や看護婦などが、家庭的なのだろうか、他の病室の人がどうした、こうしたの話しも、いっぱい出たのだろう。

「歩くのなんて簡単さ、走ることだって出来るさ」そう言って走ってみせたら、祖母が跳んで来て「なにバカなことやっているのだ」とだいぶ怒られた。

とにかく木造の建物なので、走るとガタガタ音がして、すぐ何をしているか解かってしまう。

子供は大人と違って、何でもすぐ出来てしまうものだ。

(品川区大崎の外科病院・今は近代的な大きなビルの病院になっている)

 

怪我をしてから3週間位した、明日退院だという日の夕方近くになって、僕は大変な事に偶然気が付いた。

なんとなく右目、左目交互につぶってみた、らしいのだ。

そしたら右目が全然見えない。

左眼をつぶって右目だけで見ると、真っ暗闇の世界。

まったく、視力がなかった。

普通の目であれば、瞼を閉じていても、天井に電気が点いているか、消えているか、顔を向ければ解かるだろう。

しかし僕の右目は目を開いていても、それすら解からなかった。

退院は2・3日延びたが、この外科病院では、これ以上のことは出来ず、別の病院に転院することとなった。