転んでも、たいして体が痛いわけでなく、先を歩いた。
階段を下りきって、今度は登りになった時、突然私の左腕は、がっちりと何かに掴まれた。
見ると大きな山男である。
山男・・・「さっき転びましたよね?」
私・・・「転んだけど見てたんですか?」と半分照れながら、笑いながら答えた。
山男・・・「いや見てないけど…」
私・・・「見て無くて、なんで転んだと分るんですか?」
山男・・・「いやね、下から登ってくる女の人達が、振りかえ振りかえ、登ってくるから何かあったのか、と聞いてみたんですよ。
そしたら白い杖を持った人が、階段で転んでしまって、歩けるかどうか心配しているんですと」
山男・・・「そんな話を聞いたので、すぐあなたを追いかけて来たんですよ」
その彼が掴んでいる腕は、本当に力強かった。
私・・・「何とか一人で、ゆっくり歩けるから大丈夫ですよ」
山男・・・「どこ行くんですか」
私・・・「雷鳥荘に泊まりですが」
山男・・・「それなら私も、そこに泊まるんですから一緒にいきましょう」
彼はがっちりと私をつかんでおり「俺がいればもうあんたは転ばせない、安心して俺に任せてくれ」と言わんばかりだった。
嬉しい。
私は1人でも何とか行けるとしても、この言葉にともかく応えたい。
ここは彼に頼るのが、いち番いい。
そして彼のがっちりとした手に、掴まれながら、雷鳥荘へ向かった。
雷鳥荘に入る時も、階段が危なっかしく、ちょっと怖いところが有ったが、それも彼がちゃんと支えてくれた。
その心に涙が出るほど嬉しかった。
やっぱり優しい人っていっぱいいるんだ。
いえいえ優しい人ばかりなんだ。
立山にきて会う人会う人、みんなみんな、いい人ばかりだった。