瓦礫の山道を、慎重かつ苦労しながら歩いた。
宿泊する山小屋に近づくと道は急に狭くなり、またゴロタの石も大きく、不規則で勾配もきつく、ますます歩きにくくなった。
何度もつまずき、その都度2本の杖で転ぶことを防ぎ、歩き始めて2時間ほどでようやく山小屋に着いた。
翌日は7時半に山小屋を出発し、今回の山登り1番の目的地、「一の越」に向かった。
「一の越」は立山連峰・雄山への登り口の峠で、この峠まで登れば先には槍ヶ岳などの、北アルプスの山々がパノラマのように広がるという。
歩いている辺りは3000m級の山に四方を囲まれ、標高は2500mくらい、あと200mも登れば2700mの「一の越」に着く。
そこに向かって歩いていると声がかかった。
「後ろから見てましたが、すごいですね。目がずいぶん悪いんですか?」
見ると3人とも18歳くらいの女の子。
みんな明るいから、話していて気分がいい。
「私なら目が見えなかったら、一歩も歩けないな」
「おじさん、目どうなの、見えないの」
「まあ山の形は解るけど、紅葉はみんなきれいというけど、良く分からないよ。道に引いてある石も分かりにくいよ。特に段差は怖いよ」
「何せこの白い杖が、頼りだよ」と2本の白い杖を、見せた。
「あ、そうそう山の上の方が、白いのは雪なのかな?」
「雪じゃない、草も何も生えていなく、岩が出て白く見えるんですよ」
そう我先にと3人一斉に声をそろえる。
高山植物、ハイマツ帯も限界で、その上は岩肌が出ていて、私には雪のように白く見えたのか。
「気を付けて、怪我しないように登って下さい」
「ありがとう。みんなもね。先に行って」
山頂付近の白く見える岩肌を、雪だと思って歩いていた。
もし彼女たちに聞かなかったら、家に帰って「山頂は雪だったよ」と家族に話したかもしれない。
見たときの情報量の、少なさからくる違いから、そのような錯覚や正しい情報がゆがむことも生活している時に多々あるので、ちょっと気をつける必要がありそうだと思った。