生き物の死にざま | Bleu Monde

生き物の死にざま

子供向けの生き物の本はここ数年よく出ている。

「残念な〜」から始まり、色々と関連する本が出ているが、

これは大人向けのお話。

 

タイトルが「死にざま」というのもあり、

ある程度生きて来て、その死にざまに何かを感じる世代の人が読むと

余計にその生き物の気持ちが理解出来るような気がする。

 

29の様々な生き物の死にざまが書かれている。

知っていることもあれば、知らなかったこともある。

(私はもちろん知らないことの方が多かった)

 

1つ目のお話は「セミ」。

このところ、毎日のようにセミの死んでいる姿を見かける。

翅がちぎれているものもあれば、

何かに踏み潰されているものも。

セミの死に際は急に動いたり飛んだりするので、

結構近くだと恐怖に感じるので苦手。

 

セミは成虫になってからは短い期間しか生きていないが、

地中で七年ほど生きている。

勝手に短命を憐れんでいるのは人間だけなのかもしれない。

 

4つ目の話の「アカイエカ」は壮大なミッションのお話。

(読みながら「ミッションインポッシブル」の世界になっていた)

血を吸うのはメスだけというのは、私も何かで見て知っていたが、

彼らもまた血を吸うために命がけなのである。

昨日、家の外構のニス塗りをしていて腕に止まった蚊を殺してしまった。

すでに血を吸われていた。

昼間、息子と野鳥公園に行ったが、そこでも息子の足に止まっていたので、

パチン!と数匹潰してしまった。

彼らは、子供のために血を吸っているのである。

そしてまた私も子供のために彼らを殺してしまった…。

 

「シロアリ」の女王の話なんて、切なすぎて

普段は嫌なシロアリだけれども、可哀相にすら思えてくる。

 

最後のお話の「ゾウ」にいたっては

人間は彼らより冷たい生き物になっているのではないかと感じるほど。

 

様々な生き物のの死にざまから、

「死」というもの「生」というものを、あらためて考えてしまう本である。

 

イラストは本文、カバー共にわたなべろみさん。

 

『生き物の死にざま』 草思社