有吉佐和子さんの「非色」を読む。どこよりも先に書かれていたかもしれない「差別」についての考察
スイス在住歴の長いお友達にお借りして
有吉佐和子さんの「非色」を読みました。
今はもう入手するのも難しいかもしれないです。
読んでいる最中は
「まさか、これは私小説じゃないよね??」
と何度も疑ってしまう程、筆者が主人公になりきって描いた作品。
第二次世界大戦後の日本
アメリカ人である黒人と結婚し、「戦争花嫁」として日本に暮らし、その後アメリカに渡って暮らす主人公の目を通して描く、
日本人による日本人差別
アメリカ人によるアメリカ人差別
同国人による同国人差別が次から次へと描かれていき、その被差別者の悩み、葛藤、苦しみが容赦なく語られて行きます。
肌に色がついているから差別されるのか。
結局肌の色がなんでも、人はいつも他者より優越感を感じていたいのではないか。
とても絶えきれないような悲惨な状況の中で
「私は私として生きる」
という一点にたどり着くまでのストーリーです。
タイトルにもなった「色に非ず」(いろにあらず)という概念にたどりついた有吉佐和子さんの筆力は本当に圧巻です。
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そして、私が何より嬉しいと思ったのは、この作品が1967年に出版されていた事です。
アメリカでは1970年に「青い目が欲しい」が出版され、著者であるトニ・モリスンはその後もアメリカでの黒人差別を、黒人に染み付いた「白人から与えられた価値観」を暴き続け、1993年にノーベル文学賞を受賞しますが、それよりも早く、この秀逸な「非色」が日本人の視点で描かれている事に、有吉佐和子さんの素晴らしさを感じます。
トニ・モリスンの作品の中でも繰り返される「その民族が持つ美しさを自分たちが認めず、白人から与えられた価値観に乗っ取って、黒人同士が差別し合うのは醜い。もっと民族の誇りを持って立ち上がろう」というメッセージは、世界に衝撃を与えましたが、それも有吉佐和子さんが既に「色に非ず」と端的に著して来た事なのです。
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もちろん、トニ・モリスンの語り口、表現は、読者の胸を突き刺すような、はっとさせられる表現に溢れています。この小説の終わりに描かれる黒人の少女は、白人の持つ白人のような美しさに憧れ続け、ある日、瞳が青くなっているのですが、その青い瞳はぞっとする程醜かったというところで終わるラストは衝撃的で、その筆致はとても素晴らしいです。
人間が絶えず他者より優越でいることに安心を感じるというのは、おそらく曲げようもない事実かもしれません。
そして、その理由は、人間の弱さから来るという事を「色に非ず」と言い切ってくれた有吉佐和子さんの一番好きな作品かもしれません。
時代・地域を問わず、普遍的なテーマを描いた、いつまでも心に残る一冊です。