内密バーのお客様
家の近所に、
直訳すると「内密バー」という名前のカフェがあります。
朝8時に開いて夕方6時に閉まります。
土日はお休みです。
内密なんて、なんか蜜の味っぽい名前。
スパイ映画を思い出しちゃったりして。
みんなどんな内密な話をしているのかと想像しちゃいます。
が、
気の毒な事に、誰もそのカフェを「内密バー」と呼んであげていません。
皆がそのカフェを「ベルナデッタのところ」って呼んでいます。
「コーヒー飲む?あそこ?それともあそこ?それとも、ベルナデッタの所?」
っていう感じで、呼ばれています。
そして、みなさんべらべらしゃべりまくっています。
それは①内密な話なのか、②公の秘密なのか、③どちらでもない か。
多分③
そんなベルナデッタはカフェの女主人で
やはりおしゃべりです。
手が空くと、必ずお客さんの誰かとしゃべっています。
私がお茶していた時も
「あなた達、フランス語わかるの?ちょっとわかるのね?実は私も犬を飼っていたのよ。一匹目は胸に水がたまって死んじゃって。二匹目は長生きだったわー・・・・・・」
と続いて行くベルナデッタのおしゃべり。ずっと聞いていたいけど理解度が30パーセントぐらいで長く聞き続けるのは、だんだん相づちを打つことすらもつらくなってくるのですね。
そんな「内密バー」に最近よくいるおじいさん
このおじいさん、背が高くがっしりしていて、ふっと巻いているマフラーや帽子がきまっています。
そして、キキという犬を連れています。
このキキという犬は、「噛む犬」なので皆に嫌われています。なので、お散歩中のおじいさんもあまり人と交流している様子がありませんでした。そんなおじいさんが、最近この「内密バー」でお友達と談笑しているのです!
「よかった。おじいさんにお友達がたくさんいて!!」
ってまったく余計なお世話ですが嬉しくなった私でした。
しかし、嬉しさと同時に少し寂しい気持ちにもなります。
なぜかというと、実はこのおじいさんは、最近奥様をなくされたからです。
おじいさんは寝たきりの奥様を誰からの介護も頼らずに10年間もお世話し続けていらしたのですが、
ある日救急車がやってきて、病身の奥様を連れて行き、奥様はそのまま帰らなかったのでした。
ビーズ(レマン湖半の全てを凍らせる強い季節風)が吹き始める前の、妙に暖かい日の夕方のことでした。
「あの方は、奥様を本当に愛していたから、昼間だけじゃなく、夜中に何度も起きて奥様のお世話をしていたのよ。10年もね。なかなか出来る事じゃないわ。奥様は亡くなってお気の毒だけれど、でも今までどれだけ大変だったかを想像すると・・・・・・」
とおっしゃるジュリエット(犬)のママ
キキの飼い主であるおじいさんは、介護から解放され、時間が増えたのでしょうか、それから毎日のようにキキを連れて「内密バー」に来てはお友達と談笑しているのです。
愉しそうでもありますが、アパートへ戻る時に坂道をゆっくり上って行く足取りは少し寂しそうに見えます。おじいさんの後ろをトボトボと歩いて行くキキも背中の病気で、痛みと戦っている犬なのです。
この「内密バー」、実は解釈によっては「信頼バー」と直訳する事も出来ます。
信頼関係があるから内密な話も出来る
きっとそういう願いが込められたバーなんですね。バーというかカフェだけど。まあそれはいいか。
ちょっと人恋しい人たちが集まって、顔を合わせた者同士が軽くおしゃべりする「ベルナデッタの所」
カフェイン苦手な私も常連になりたいな~~。フランス語の勉強になるかな~~。