ひな祭りの女の戦い | N e w  Y o r k B l o w -NYでもタコ焼きを焼く英国人へ-

ひな祭りの女の戦い


昨日3日、今NY国連本部で開催中の、
「女性の地位委員会」(女性の地位向上を目指す委員会)に、取材に行って来た。
そこで各国パネリストが様々なスピーチをし、
世界各国に残る女性の地位を下げる悪い風習や法律を例に挙げ、
「○○国の○○という法律は、女性の地位を平等に保っていない」だとか、
「○○国の○○という風習は、女性の権利を侵害している」等と言った事を
指摘し、批判し、それは即刻是正せねばならないと口々に言っていた。
中でも、女優のメリル・ストリープがスピーチした内容が気になったので、
今日取り上げようと思う。

アメリカでは政治的な発言や自分の主義主張を、
こうした公の場で述べる有名人は多数居る。
先の大統領選等では、支持政党側の大統領候補を支援するのは普通の事だ。
彼女は先に述べた様な内容の批判例をつらつらと並べ、
その内、日本の民法の「再婚禁止期間」について批判した。
聞いていた私は、「はぁ?!」と思わず発してしまった。
それは、彼女がまるっきり間違った認識をしていたからだ。

「再婚禁止期間」って何??と思う人の為に、ココで解説。
再婚禁止期間とは、離婚後男性は直ぐに再婚が出来るのに対し、
女性は離婚後6ヶ月間は再婚が出来ないようになっている。
それが「再婚禁止期間」だ。

現在アメリカでは殆どの州の州法で、
男女とも「再婚禁止期間」についての定めが無いのに対し、
日本では民法第733条で、
「男性は離婚後翌日でも結婚できるのに対して、
 女性は離婚後6ヶ月間は再婚を禁止する」と定められている。
確かに性的な差は儲けられている。
一見すると女性にのみ負担を強いる法律に見える。
この為彼女は、「これは女性差別だ」とスピーチで批判したらしいのだ。

じゃ、何でこんな法律が??思うだろうが、それは至って簡単な理由で、
もし、離婚前に持った性交渉の結果として妊娠して居たとして、
離婚後直ぐに結婚した場合、その子は「離婚前の夫の子」なのか、
「再婚後の夫の子」なのかという父性推定の混乱を避ける為であり、
それが確実に明確になる6ヶ月という期間を設けて、
その別が判定し易い様にする為の、「子の為の法律」なのだ。
それを、「女性差別だ」と痛烈に批判していたのだ。

勿論これが制定されたのは明治、大正のほぼ100年前。
(スイマセン、いい加減で)
だから現代の様にDNA鑑定などが無い頃に制定された法律。
それに上記以外の例外として、
極端な話だが、離婚したその翌日に子が産まれてしまえば、
結婚は出来るのだ。
(父親が誰かという判定が出来る為)

ストリープ女史はこういった事には全く触れて居らず、
妻を殴ってもいいという法律が有るとか、
妻の生殖器を切りとってもいいという風習が有るとか(あるんです、マジで)、
そういった非人道的な問題が有る法律や習慣を並べ立てた後に続けて、
この日本の法律を持って来て「差別だ」というのは、大間違いだ。
これは女性差別をする為の法律ではなく、
子の権利確立や出生の正確性を計る為の法律。
内心、「違うーーーーーっ、違うんだぁーーーーー、メリルゥゥゥゥゥ!!」
と叫んでいたのは言うまでも無い。

実は、この民法第733条というのは日本国内でも批判の声の有る法律で、
現在野党が国会に提出している民法改正案には、
「再婚禁止期間を100日へ短縮する事」が盛り込まれている。
(100日程度でDNA鑑定結果が得られるだろうという考えから)
また、再婚禁止期間を設ける事そのものに反対する声も有る。
本来の意図と違った解釈をされており、
また時代に沿った変更を要求されている法律でも有る。

法律なんてどうとでも取れるものだといえば元も子もないが、
この法律が出来た背景には、
生まれた子が、誰の子なのかという問題が何度と無く起こった為、
法律が制定されたと推測される。
こういった実生活に沿った法律が制定されるというのは、
実際に問題が多発した為、その指針とする為に制定したと読み取るのが、
理解し易いと思われる。

この法律は先に述べた様に「子」の為の法律であって、
決してその親に対して掛かるものではなく、
ましてや母親の権利を損なわせる為の法律ではない。
しかし、人によっては解釈が全く違う人も居る。
日本の或る法改正を働きかけているグループの
法改正の必要性の根拠の一つとして、
「再婚禁止期間の規定は、男性血統中心主義に基づく時代遅れの法律だから」
というものがある。

読んだ瞬間、???と思った私は、
30人位の20-60代女性に先に述べた法律の存在理由から全て話して、
これが「男性血統中心主義」に関係するものか、
またこの法律自体が「女性差別」に当たるかを聞いてみた。
結果、誰一人「男性血統中心主義」だとは思わないと言った。
法律の意図がハッキリしているからだという理由だった。

他の法律に関してはそうとも取れるものが有るかも知れないが、
この「再婚禁止期間」に関しては、
6ヶ月間結婚出来ないというのは実際足枷になるかもしれないけれど、
これが「女性差別か否か?」と問われれば、
「女性差別ではない」とみんなが言い、
「男性血統中心主義」という事は感じないと言われた。
凡その人のその答えの理由は、妊娠は女しか出来ないもので、
男には出来ないものに対して、男にも課す事は出来ないし、
どうしても6ヶ月待て無い理由は見つけられないという物だった。

確かに男は離婚後直ぐ結婚できるのに対し、女は6ヶ月待ち。
それに現代では技術進歩のせいでDNA鑑定をすれば、
父親なんて直ぐにわかるし、妊娠判定を医師の下で行い、
それを証明書類として提出すればいい事だ。
この法律のポイントとなっている所は端的に言えば、
「離婚時に妊娠中か否か、また妊娠中なら父性推定可能か否か」である。
なので現代に合う法律にするなら、
「妊娠して無い事を証明する医療機関の書類添付の場合は、これに準じない」
という一文を加えれば、6ヶ月以内の再婚は可能になる。
(完全に変更するか、付加文を付けるかは議論の余地有)

しかしストリープ女史が訴える数々の女性差別とは、
明確に一線を隔す全く別の観点から作られた物であると言えると私は思う。
居ても立ってもいたれなくなった私は、
会議終了後これ等を伝えるべく彼女に会いたいと広報官に申し出たが、
スケジュールの都合で時間は貰えなかった。
しかし、この会議の事であればアポを取ってくれるという返事を、
マネジメントオフィスの担当者から貰ってくれた。

国によって、人によって、性別によって、様々な事によって、
物事は色んな形に変えられ、解釈される。
きちんと理解される事も有れば、事の成り立ちをきちんと理解されずに、
こんなスピーチをされる事が普通に有る。
特に日本は戸籍法という人が生まれて死ぬ迄、
そして家系すらも「公文書で」遡れるの徹底した管理法が施行されている。

アメリカやイギリスみたいな先進国であっても戸籍自体が無い国と違い、
細かな管理が出来ており親兄弟祖父母親戚と全てが判る。
だから、日本のパスポートは世界から最も信頼されているのだ。
その人間の出生に対して、国のお墨付きがあるからだ。
これは他国に殆ど無いシステムが存在するが故、
理解して貰えない状況を作っているのかも知れない。
この様な法律やシステムがあってこそ、
遺産や権利を受け継ぐ時にこういった公文書が活躍する。
それを簡便に的確に目的と連動して働かせる為の法律の一つが、
この様な法律だといえるのかもしれない。

だからこそ、女性の権利を損なわせる為の法でなく、
子の出生の明確性の確保と戸籍記録の正確性を維持させると共に、
子の権利を守ってやる事が優先された法律である事を、
ストリープ女史に伝えたいと思った。
彼女が先述の様な説明で理解を示してくれるか否かは不明だ。
しかしそれを誰かが彼女に伝えない限り、
彼女は今回の様なスピーチを繰り返し、
間違った情報に基づく間違った見解を発信し続けるのだ。

彼女は既に大きな名前を持った人だから、
このまま発信され続けると事実が違うと訂正をするのには、
かなりの労力を掛けねばならないというのは明確だ。
だからこれを彼女に伝えねばならないと思ったのだ。

取り敢えず、来週、彼女へレターを書こう。