やっぱり無理か | N e w  Y o r k B l o w -NYでもタコ焼きを焼く英国人へ-

やっぱり無理か


「That’s my baby!」これが今朝のNYポストの見出し。
予想通りオスカーはミリオンダラーの下へ旅立った。
テレビに映るプレゼンターは次々に、
「オスカー・ゴウズ・トゥー...」と言った次に、
ミリオンダラーの出演者の名を呼んだ。
今年は下馬評通りと言えば一番判り易いかな。
ベイビーは4つのタイトルを得た。
日本人女性に人気の有るレオ様にオスカーは微笑まなかった。

仕事上+個人的にも、毎年オスカー発表迄には、
一通りノミネート作は全て見る。
矢張り全て見た感想としては、
今回の結果は「他力」が働いては居ない感じだ。

「レイ」は、昨年亡くなったレイ・チャールズの自伝映画。
(勿論サントラは映画の帰りに買いに走ったぜ!)
撮影時から主役のジェイミー・フォックスに、
直々に指導する程の協力体制だったのに完成を見ずに急逝。
本物かと見惑う位のパーフェクトさは観客の眼と心を奪い、
ディカプリオも他のどの映画の主役も勝てない良さだった。
ディカプリオはもっと勉強する必要が有ると私は思う。
だから、まだ受賞にはチョットだけ遠いのだ。

次いでプロボクサーになる夢を30過ぎても追い続ける主人公を、
「ミリオン・ダラー・ベイビー」で演じたヒラリー・スワンクは、
ノミネートされただけでも十分よと電話口で夫のチャド・ロウと喜んでいた。
今日は紺の長いドレイプのドレスに身を包み、
スピーチに立った彼女の眼は潤み、
主役に抜擢したイーストウッドに深い感謝を寄せ、
この役を演じられ本当に嬉しいと体が表していた。
この賞も彼女以外の女優は考えられなかった。

助演女優賞は、「エイヴィエイター」で往年の名女優、
キャスリン・ヘプバーンを演じたケイト・ブランシェットが獲得。
これも競合する映画の他女優にはない、強さが有った為納得。
彼女ははっきり言って、レオよりもかなり良かったのは事実だ。

また助演男優賞は何度もノミネートされ続けた末4回目にして受賞出来た、
これまた「ベイビー」仲間の燻し銀のモーガン・フリーマンが受賞。
ノミネートの度に受賞できない理由を探していた私は、
今回の受賞は彼以上に嬉しい。
プレスに「オスカー受賞で全面的に受け入れられたと感じた。
沢山の人がマイノリティーの私に投票してくれたということだから」と、
長い道のりの末の受賞の喜びを話した。
まだまだ日本人には、理解出来ない「感触」かもしれない。

作品賞と監督賞は「エイヴィエイター」との接戦の末、
やはり「ベイビー」に軍配が上がった。
作品全体のクオリティは矢張りベイビーの方が上だった為、
オスカーはクリント・イーストウッドの下へ...。
実際の映画はボクシングを暗い表情で描いている部分が多いせいか、
登場人物の喋り方は明瞭どころか、ボソボソと話す。
だから試写を見た後、聞き取れなかった台詞をもう一度聞く為に、
公開されてからもう一回見に行った。
でも、不明瞭な所を確認するその値打ちは有ると思わせる映画だった。
イーストウッドの丁寧な映画作りは作品を追う毎に磨きが掛かり、
本当に映画が好きなんだと実感出来る作品を送り出す映画人だと、
常に再認識させられる。「プロ」を感じる数少ない映画人だ。

一方メインの賞には縁がなかった「エイヴィエイター」だが、
編集賞、撮影賞をはじめ技術的な賞を中心に最多の5冠を獲得。
メインキャラを生かすも殺すもこういった技術さんの仕事は、
基本中の基本の仕事。
ベイビーにはこういった仕事人は、今回縁が薄かったようだ。

総評として今年は大ヒット映画が無かった分、
各賞は適材適所からピックアップしたと言ったら一番合ってるだろう。
グチャグチャに掻き回す様な話題作や、
問題作はノミネート段階で見当たらなかった為、
どちらかといえば静かな戦いであった。
しかし、夫々の作品の中で「確実な仕事」をした映画のみが、
オスカーを獲得出来ていると言える。

今年はディカプリオにも眼が向いていたが、
タイタニックで取れなかったのに、
今回の「エイヴィエイター」では絶対無理だ。
確かにいい仕事してるがトータルで見ればまだまだだ。
レオにもっと修行が必要なのは、他と比較すれば良く判る。
それにハリウッドはNYに冷たいし、差別も平然と有るのだ。
日本ではまだどの作品も公開されて無いので、
公開が楽しみだろう。

来年の正月映画にと進められてた「ベイビー」は、夏頃公開に変更された。
(「レイ」はもう公開されてる??)
だけど、いい翻訳家に翻訳される事を祈るばかりだ。
受賞作品・人物は下記の通り。
日本で公開されてから、受賞作品を見比べるのも、別の楽しみ方だ。

今年の作品群の中で個人的に強く勧めたい作品は、
無冠に終わったドン・チードル主演の「ホテル・ルワンダ」だ。
先進各国で数万人が見てくれれば、
もっとアフリカに集金出来るかもしれない。
私達日本人ももっとアフリカに目を向けなければならないと自覚させられる、
重要で大きな問題提起をしてくれる映画だ。
日本公開の際は、是非ご覧になって下さい。

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作品賞:『ミリオン・ダラー・ベイビー』
監督賞:クリント・イーストウッド『ミリオン・ダラー・ベイビー』
主演男優賞:ジェイミー・フォックス『レイ』
助演男優賞:モーガン・フリーマン『ミリオン・ダラー・ベイビー』
主演女優賞:ヒラリー・スワンク『ミリオン・ダラー・ベイビー』
助演女優賞:ケイト・ブランシェット『エイヴィエイター』
作曲賞:『ネバーランド』
編集賞:『エイヴィエイター』
撮影賞:『エイヴィエイター』
美術賞:『エイヴィエイター』
脚色賞:『サイドウェイ』
録音賞:『レイ』
脚本賞:『エターナル・サンシャイン』
長編アニメーション賞:『Mr.インクレディブル』
メイクアップ賞:『レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語』
衣装デザイン賞:『エイヴィエイター』
長編ドキュメンタリー賞:『ボーン・イントゥ・ブラザルズ』(原題)
短編アニメーション賞:『ライアン』(原題)
実写ドキュメンタリー賞:『ワスプ』(原題)
視覚効果賞:『スパイダーマン2』
音響編集賞:『Mr.インクレディブル』
ドキュメンタリー賞:『マイティ・タイムズ・ザ・チルドレンズ・マーチ』(原題)
歌曲賞:『モーターサイクル・ダイアリーズ』
外国語映画賞:『海を飛ぶ夢』(スペイン)