自閉症のブラザーに3DCGを教えるよ!というブログを始めることにしました。ブラザーに3DCG制作を教え始めて、正確には2年ほど経っています。もともとブログ化することなどこれっポチの考えていませんでした。ですが、今まで教えていく中で多くの発見があったため、記録に残しておこうと思いブログ化することを決意しました。最初は、この2年の経緯をざっと振り返りたいと思います。

 

## これまでの経緯

### はじまり

 今からたぶん2年くらい前、ブラザーの就職先が見え始めた頃に、家族との会話でブラザーの趣味についての話題になりました。というのも、当時のブラザーは自分が何を楽しみに生きているのかがわからず、毎日がつらいとこぼすことが多かったタメ、趣味でも作ったらどうかという流れでした。何が楽しみかわからないなんて言い出せば、私自身も一体何を楽しみに生きてるんだろう?と思うわけではありますが、ブラザーの場合は自閉症であることもあって、思い悩む度合いがパンピーとは違います。このとき私は母に「Blenderというソフトで3DCG制作でも趣味にしてはどうだろうか?」と何気なく提案してみました。ただ、提案していてなんですが、このときの私(今の私もですが)はさっぱり3DCGについて知りませんでした。友人がBlender(3DCGを制作するソフト)愛好家で綺麗なCGを作っていたこと、私が大学で情報工学を学んでいたため最初のハードルはそこまで高くないのではとう楽観的思考、何よりBlenderはソフトが無料であったことからの発言であった。何気ない発言だったのですが、なぜか採用されてしまい3DCG制作用にDesktop PCを購入するに至りました。さらにブラザーと母と私でニトリに行き、PC用のデスクとチェアを買ったことは鮮明に覚えています。滅多に開かない家族の財布の紐が開いた瞬間でした。おそらくですが、環境を整えるのに30万ほどは合計でかかっているのではないでしょうか。ここが、ブラザーの3DCG学習の旅の始まりでした。

 

### 学習の開始

 とんとん拍子に周辺環境が整い、学習は開始されました。手始めにジュンク堂にいき、Blender(3DCG制作ソフトの1つ)の書籍を探しました。私自身の情報工学の経験から、出版から1年以上経過している本は避けて、さらに文字少なくイラストがカラーになっている本を教材にチョイスしました。書籍は『無料ではじめるBlender CGイラストテクニック』です。これを教材書籍としました。学習の出だしは極めて順調で、学習開始から数日で、教材書籍のCHAPTER02まで進み、例題のくまを作れるようになりました。そう、出だしは順調でした。

 

### しかし、直ぐに停滞

 ここでさっそく、最初の問題点にぶつかりました。実は私とブラザーが直接会うのは実は年に15日前後で、一緒に入れる時間は私が帰省したときだけです。一緒にCHAPTER02まで学習した後、次にCHAPTER03を学習するように指示をして、私は実家を離れました。そして、この後全く進歩がありませんでした。私の生活が忙しくなってしまったことや、ブラザーもストレスをため込むことがあったようで、作業に集中できなくなってしまったこともあり、私が次に帰省するまでの半年間Blenderによる3DCG学習は完全にSTOPしてしまいました。順調だったのは、ほんとに最初の数日だけ...。

 

### 教材の書籍を変更する

 半年以上もSTOPしていたブラザーの3DCG学習ですが、時期は春先になり久しぶりに私が実家に戻ったことにより再開されました。まず私はどうして学習が止まってしまったのかの要因を考え、1つの結論にたどり着きました。それは、教材書籍が初心者向けではなかったことです。最初のページからCHAPTER02までは、非常に緩やかに進行していくこの書籍、しかしCHAPTER03から概要をざっくり紹介する路線にシフトしていきます。そのため、ブラザーはCHAPTER03から自力で学習することができませんでした。ちなみに、私がCHAPTER03から読んでみても、操作方法がかなり省略され同じように作るのは難しかったです。これでは初心者はできるはずがありません。誤解のないよういいますが、この書籍はかなり良書であると私は思っています。しかし、初心者が最初に手に取る1冊には向いていません。さらに、CHAPTER02まで一緒にやったことが裏目にでてしまい、私がこの教材書籍が、初学者に向いていないと気がつくことにも時間がかかってしまうことにもなりました。要因がわかったため、教材書籍を変えることにしました。

 ジュンク堂で教材書籍にする本を吟味しているとき、出版が新しいものに注目していたわけですが、Blenderの書籍自体あまり多くは出版されていないのでこの制約を取り除くことにしました。。そこで新たに、Blender 3DCG モデリング・マスターという本をamazonで注文、物理本をブラザーにプレゼントして、この書籍を教材書籍とすることしました。この書籍は写真が多く、順を追って手順を説明してくれるため、ブラザーが自学習できるはずだ思いました。そして、1冊目の本と同様にブラザーとともに学習しました。また、ブラザーが私なしで自学習できるように、1人で本を読みながらできることも試してみました。これは手応えありでした。これで学習は進む。この教材書籍を最後までやると、可愛い犬が作れるようになるので、多少時間はかかることは予想できましたが、ここまで一人でできるだろう、そう思って私はまた実家を離れました。

 

### やっぱり停滞...。

 しかし、やはり停滞してしまいました。この停滞の要因は私にありました。ブラザーは計画などを立てることが非常に苦手です。たとえば2択で意思決定を促すと非常に悩みます。自分で自分のことを決めるのが苦手。そして、計画もなくできるほどBlenderは甘くはありません。ブラザーに全てを任せて進むはずがありませんでした。3ヶ月くらい経ったのち、進捗を聞いたとき全く進んでいないことに一瞬絶望したものの、考え直してみると丸投げしてできるはずがありませんでした。なにより、このときまで私は3DCGを学習する気がまるでありませんでした。私はあくまで道筋を示すだけで、後はブラザーにやってもらおうというスタンスを取っていたのです。パンピーはこの方法で自走してくれるかもしれませんが、ブラザーは自走できませんでした。私の私生活も忙しさを増していましたが、時間を作りブラザーに教えるとともに私自身も3DCGを学習する覚悟を決めました。そして、私も電子書籍で『Blender 3DCG モデリング・マスター』を購入し、Google Hongout(Google のサービス)で画面共有しながら学習することなりました。

 

### 諦めがはっきりと見えた

 この試みはこれまでと違い順調な滑り出し、とはいきませんでした。ブラザーとGoogle Hougoutでつなぎながらやることで、これまで私が気がつくことができなかった隠れた課題がいくつも浮かび上がってきたのです。

 最初に浮かび上がった課題は、ブラザーの状態変化でした。自閉症であるブラザーは思い込みが激しいところがあり、ちょっとした誤操作、やったことを忘れるなどが起きると「自分はダメなやつだ」と激しく取り乱してしまいます。こうなると、その日の学習を継続させることが非常に困難。そして、仕方のないことですが、私にもストレスになります。時間を割いて教えているのに、一方的に私が怒鳴られせっかく学習するために作った時間がメンタルケアに取られてしまいます。一重に私がブチギレることがなかったのは、これまで10年以上共に過ごしてきてブラザーの苦しみもなんとなくわかるからだと思います。

 次に、指示語などがブラザーは苦手であり、画面の左上や右下などの指示がほとんど意味をなさないことでした。リモートであるため全て声で説明する必要があり、このため指示をすることが非常に大変でした。情報処理能力の差だと思いますが、私が説明している特定の箇所を見つけ出したりすることも一苦労であった。これは1つめとは種類の異なるストレスで残念ながらこっちではプッツンすることもありました..ブラザーすまぬ。丁寧に説明しても指示が伝わらないのは大きなストレスでした。この後も次々と細かい課題がたくさん浮かび上がってきました。

 しかし、私にトドメをさせようとしたのは、ブラザーが全く文章を読むことができないということが明らかになったことでした。これは致命的でした。そして衝撃でもありました。なぜなら、ブラザーはこれまで文章をスラスラと読み上げていたからです。「じゃあ、ここ読んでみてー」と促せばブラザーはスラスラと読みます。それもそのはず。私が高校生のときゲームに明け暮れていたときもブラザーはずっと勉強していました。テストでいい点を取っていたことも知っています。ただ、その『意味』を全く把握できていませんでした。例えば「正面からみると〜、側面からは〜」という文があれば、普通に読めます。ですが、正面と側面の意味がわからないため、文章が何を説明しているのかを理解できていないという感じです。これが部分的であれば私が教えながらできるのですが、ほとんどの文章に対してであり、辞書で調べても調べた説明文の意味も理解できないということも判明しました。私の心は折れかけました。これは無理だ。

 

### 首の皮一枚つながった

 「〇〇君(学習中にブラザーを呼ぶときは君付けなのだ、とくに理由はない)。Blenderはもう諦めよう。」と心の中ではずっとおもっていました。けれど、それを言葉にしなかったのは、ブラザーの設備に30万もの費用がかかっているということ、3DCGをやるといいよと家族に言ったのが私であったことでした。なにより、ブラザーの腕前は確かに上達していました。そして今学習している箇所は辛いところでしたが、もう少し頑張れば景色が変わるところまできていました。これは、私もBlenderを学習したことによってわかったことです。それに、家族に文章を読めるようになった欲しいという思いもありました。兄弟という間柄上、つきっきりで教えることはできず、私にも私の人生があるため、ブラザーにフルに時間は割けませんが、改善策を一緒に考えたりをしてもいいかもと思いました。

 

### そして、学習はつづくのだ

 もう少し学習が進めば、Blenderでできることの幅が広がる。後少しは丁寧に教えてあげよう、と決意して今に至ります。

 

## まとめ

 ざっくりとこれまでの経緯を振り返ってみました。ここに至るまではストレスばかりでしたが、ブラザーはかなり上達しており最近では関心することもたくさんあります。私の役割は教えるということもそうですが、それよりはブラザーが快適に学習できるような環境を揃えてあげることだと思っています。ブラザーに自走してもらうという目標はまだまだ諦めてはいませんので、浮かび上がった課題点に関して今後も取り組んでいこうと思っています。また、文中の通り私自身Blenderの初心者ですが(モデリングだけならブラザーの方が上)、Blenderに関して学習したことも記事に投稿できたらと思います。それでは。