俺は鬼道君の中の熱を感じていた。
鬼道君はというと、俺の体にしがみついて荒い息を繰り返している。
「・・・なあ、もう一度きくぞ?何で俺のところに来たんだ?」
「はあ・・・、あなたに・・・こういうこと、また・・・してほしかった、からぁ・・・」
「あんなにひどいことしたのに?鬼道君、嫌がってたじゃないか。」
今でも覚えている。
俺がこのイナズマジャパンというチームを追いかけることになった、引き金とも言える存在。
俺が始めてあの稲妻町と言うところで抱いた少年。
それは、紛れもない鬼道君だ。
「それでも・・・忘れられなくて、だからぁ・・・・」
今までこんなことはなかった。ましてや、人間が淫魔に恋をするなど。
「・・・そろそろ動くよ。」
俺は腰を動かし始めた。
いつもと変わらない。俺にとって、この行為は食事だ。
栄養を手に入れる以外に意味を持たない、空っぽの行為。
でも、なぜだろう。今日は、いつもとは違う気がした。
「はぁ・・・気持ちいい、かい・・・?」
「あ、はぁ・・・はい、きもちい、です・・・」
気持ちいい・・・この言葉は、ここまで胸に響くものだっただろうか。
胃が満たされていく感覚のほかに感じたもの。
心の奥に芽生えた、小さな暖かさ。
それは俺にとってこの好意を、とても甘美なものに変えた。
行為が終わると、俺は鬼道君と並んで座っていた。
「・・・・あの、」
「ん?」
「名前、まだ聞いてないですよね?」
「・・・・・グレイスだ。」
「グレイス・・・」
俺の名前を復唱する鬼道君の声は、どこかうれしそうだった。
END