とはずがたり | Kazuのブログ

とはずがたり



 水は金なんだ、奴らにとってはな。



 小さな社用車にはアフリカの太陽が振りそそぎ、冬だというのに僕はやたらに汗をかいていました。

運転手のアルマーノは、ソマリアでの体験の話になっても穏やかな口調を変えず、淡々と語り続けます。

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ああ、俺はソマリアの国境でしばらく働いていたよ。
どうしてかって?ソマリア国境地帯で事業をやってる金持ちに雇われて、運転手をしてたんだ。

ソマリアか。暑いところだ。
そして、カラカラに乾燥している。

政府はないだろうって?政府なんて、政府の建物から数100メートルまでが自治の範囲さ。今はケニアに逃げて暫定政府を作ってるって話だ。おかしな話だろう?隣の国に自国の政府を作ってるんだから。

襲われたことは何度もあったな。
やつらは、小さな草むらの中に潜んで待ち伏せしてるんだ。
獲物が近づいてきたら、銃を持って取り囲む。
抵抗はしない。したら殺されるからな。

やつらは全部を奪っていく。
全部だ。

食料、ガソリン、服、それから水だ。
水は金なんだ、奴らにとってはな。
ソマリアは暑くて、干上がるくらい乾燥してる。
そんな土地では、水は金よりも値打ちがあるんだよ。

奴らは、そうやって働くことを辞めた。
強盗をした方が割がいいのに気がついたんだ。


カスだ、奴らは人間のカスだよ。



今の建物を見たか?
ケニアの軍隊の収容施設だ。
周りにあるアパートも、すべて政府関係者のものさ。

ケニアの軍隊は働かない虫けらみたいな存在だな。
戦わずして、真昼間からビールをあおってるんだから。気楽な商売だよ。

ケニアの政府は、みんなキクユ族だ。この国で、10人に1人はキクユさ。ケニアの中で最大の部族だが、最低の人種だ。奴らは金もうけのことばかりで、心の綺麗な奴なんていない。

もともと、初代大統領のジョモ・ケニヤッタがキクユなんだ。ケニヤッタは政府要職に身内の人間をつけた。だから、キクユが幅をきかせたのさ。

次の大統領モイは、別部族からだったが、こいつもひどかったな。汚職だらけだ。今の公共工事はこのモイの時代に決めたもんが多い。

こいつも20年やって、今はキバキ大統領だが、こいつもまたキクユからだ。
ケニアの他の部族は、みんなキクユ族のことが大嫌いだ。いい話は聞かないね。



警察はみんなダメだ。奴らがいるところでは、必ず事件が起こる。
事件を起こしに行ってるのさ。
あんまりいい職業じゃないからな。
金をむしり取るだけが彼らの楽しみだよ。


ケニアの警察は、本当に腐りきってる。
いいか、俺はキスムという所が出身地でな、ウガンダとの国境近くにあるんだ。ちょっと買い物に出かけに、ウガンダまで行くわけさ。それこそ、スーパーに買い物しにな。

ウガンダに入るときには、みんな笑顔で、「よぉ」なんて言いながら、世間話をして、するっと通してくれる。これがケニアに入る時には別さ。ケニアの警察は金を取ることしか考えていないし、フレンドリーでもない。

タンザニア、ウガンダは違う。ケニアだけだ。
ケニアの警察は汚職にまみれてるんだ。
この国は汚職だらけだ。


みんなそれに慣れてしまった。


なに、シートベルトが壊れた車に乗ってたら、逮捕されそうになって賄賂を要求されたって?そりゃひどい目にあったな。
な、キクユってやつらはそう言う人種なんだ。


ケニアの郷土料理か。
そうだな、キビトウモロコシだな。
コーンとは違う、キビトウモロコシとソースを炒めて食べるんだ。俺は良く食うが、あんたみたいな仕事で来てる人間が食べる代物じゃ無い。
次来たら食べてみな。


そっちはスラムだ。最貧民だ。固まって暮らしてる。
別に入っても危険なことは何もない。
次に来たら行ってみるといい。
治安は悪いと言われてるかもしれないが、住んでるのは普通の奴らだ。
ここに住んでる奴らは、さっきのトウモロコシの料理みたいな、本当に最低限の食事を、1日一回で生活してる。


本当にひどい暮らしだよ。生きるだけでもギリギリだな。


俺か?俺も貧困層の一人だよ。1ヶ月、15000シリング(日本円で約1万5千円)で生活してる。
子供は、6人。大学生が一人、高校生が一人、後は……そうそう、大学生の男はナイロビ大学に入った。頭が良い子でな、奨学金をもらって入ったんだ。
キクユの奴らとは大違いだろう。そうだ、ナイロビ大学はこの国の最高学府だからな。
今は、エンジニアを目指して頑張ってる。
……そうだな、この子が就職したら、俺の生活が楽になるんじゃないかと期待してるんだが。下の子もナイロビ大学?はは、そうなってくれるといいんだが、そう簡単にはいかない。

でも、こいつも頭はいいんだ。



俺みたいな地方から出てきた人間は、ナイロビじゃいい就職口がなかったんだよ。
学もない、金もない、コネもない。
地方じゃ仕事もない。

みんなナイロビに集中している。

昔々は、ナイロビも違った。ナイロビってなんの意味があるか知ってるか?「冷たい水が湧く場所」って意味だ。
今じゃ、見る影もないくらい、渋滞ばかりの大都会だ。
みんな地方から出てくる。ナイロビに集中する。
ナイロビじゃキクユが幅をきかす。

貧しいのは、地方から出てきた人間だ。


もうすぐナイロビ国立公園の入り口だ。

ケニアの他の観光にいい場所なら、そうだな、マサイ・マーラがいいだろう。

いや、近くはない。ここからは飛行機で行くしかないな。
マサイ・マーラ一帯が国立公園に指定されている。ホテルやコテージもある。
マサイの人間がいる。有名な場所だよ。


行ったことあるかって?俺はない。生活に余裕はないからな。

一生に一回でもいいから、いつか行ってみたいよ。


よし、次のサファリバスは1時間後だな。俺はここで待ってる。
楽しんでこい。

ん?ああ、気にするな。
俺は金をもらって、アンタを連れて回るよう言われてるんだ。
ナイロビ国立公園には、40年ナイロビにいるが、中に入ったことはない。
(中に入るのには5000シリングほどかかる)
土日も働かないと、生活は出来ないさ。



仕事が好きな訳じゃないが、生きていかないとな。




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バスに乗り込む前、僕は売店で彼に2本のジュースとポテトチップスを買いました。




日本で買うのに比べたらずいぶんと割安な値段でしたが、アルマーノの弁を借りれば、ケニアの中では相当の割高の値段らしいです。

サファリバスは4時間ほど公園内を回り、僕は生まれて初めて
野生のキリンも、


シマウマも、
バッファローも、
カバも、
ワニも、
ガゼルも、
スプリングバックも、


クドゥも、
そしてライオンが狩りをする姿も見ました。




バスが帰ってくると、すっかり暗くなった中、アルマーノは一人車の中で僕の帰りを待っていて、笑顔で手を振って出迎えてくれました。

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2年前、別のSNSで描いた日記があったので転記しました。
いつもと違う長文、すみませんでした。


今では行く機会がなくなってしまいましたが、アフリカが好きです。
アフリカにもっともっともっと関わりたいです。

バスで出会った子供