「他にはどんな国に行ったの?」
「西大陸の大国は大体」
「それじゃ、皇都にも行ったことあるの?」
「あるよ」
「こことどう?
比べ物にならない?」
「街が三つ繋がってるから、余計に大きく見えるけど……。
確かに、皇宮は大きかった」
「皇宮のなかに入れるってホント?」
「第一門だけなら入れるよ。
一般兵の居住があって、家族が行き来しやすくなってる」
「第一門って何?」
「身分によって、入れる場所が決まってるんだ。
第一門から第五門までと奥門で六つある」
「奥門?」
「皇族の居住に繋がる門だ。
一番奥まっていて、奥宮とも呼ばれているんだ」
ふわー、とルリが感嘆の溜め息を上げる。
「やっぱり、ラディンネル国って田舎っぽいわよね?」
「穏やかで良い国だと思う」
やはり都会への憧れが強いのか、ルリは目をキラキラとさせて話をせがんだ。
* *
珍しい組み合わせが店にやってきた。
ルリが言うには、
「クォーズと並んで歩くと、あたしって添え物みたいなの」
ヨウスのことは嫌いではないが、二人だけでいたくないらしい。
何となくわかる気がする。
「ティス、今日のは力作よ!」
ルリは小さな包みを突き出してきた。
過去の経験が危険を察知し、おもわずのけ反る。
「大丈夫だから!」
難しい問題だ。
ルリは頭が良い。
性格もサッパリとしていて、気遣う心も持ち合わせている。
だが、恐ろしいくらい料理が下手だ。
不味いだけならしかたないが、寝込むほど危険なものを精製してくる。
ティセットの反応はしかたのないことだった。
「仕込みが終わってからな」
生きているうちに今日の仕事を片付けたい。
「新しいの?」
「魚の塩漬け」
ルリが樽のなかを覗き込む。
「クサい!」
「漬物なんだから、当たり前だろ」
ははは、とティセットは笑った。
「おや、誰かと思ったら、ルリじゃないか」
厨房からニッチのお女将さんが顔を出した。
「悪いけど、あんたのお父さんに注文をいいかい?」
「はい!」
ニッチのお女将さんが手招きするのに、ルリは駆けていった。
それで、とヨウスを振り返る。
「どうだった?」
「ごうか……く……?」
学生証を取り出したヨウスの手が止まる。
「どうした?」
ヨウスは学生証の表をティセットに向けた。
「トルクのじゃないか。
また取りに行かなかったのか!?」
落ち続けるトルクは、このところ自分で合否を訊きにいかないのだ。
ティセットも一度だけは代理で受け取りに行ったが、馬鹿らしくなって辞めた。
「どうせまた落ちたんだろ?」
「合格だよ」
「だろ?
もうこれで何回目だよ!
……って?」
「トルクは、合格してた」
「…………」
「…………」
「…………ウソ」
ヨウスは丁寧に学生証を袖で拭い、表裏を目の前で披露してくれた。
間違いない。
トルディス・カル・フェナッタ。
語学中級、取得。
「…………奇跡だ」
「そうなのか?」
「だって、あのトルクが……」
「試験のあとに答え合わせをしたけど、問題なさそうだった」
「でもヨウス、トルクなんだぞ!?」
残念なことに、トルクがこれまで散々な結果を出してきたことをヨウスは知らない。
交換生に選ばれたこと自体が間違いな気がするほどトルクの頭は悪いのだ。
それが、合格したなんて……。
「明日、黒板が降るかも」
「…………」
ティセットの呟きに、ヨウスは苦笑した。
「トルクはがんばったよ。
ちゃんと結果が教えている」
「……うん、そうだな」
そう。
これは喜ぶべきことなのだ。
「よし!
ヨウス、トルクたち呼んで来いよ。
みんなでお祝いしよう!」
「西大陸の大国は大体」
「それじゃ、皇都にも行ったことあるの?」
「あるよ」
「こことどう?
比べ物にならない?」
「街が三つ繋がってるから、余計に大きく見えるけど……。
確かに、皇宮は大きかった」
「皇宮のなかに入れるってホント?」
「第一門だけなら入れるよ。
一般兵の居住があって、家族が行き来しやすくなってる」
「第一門って何?」
「身分によって、入れる場所が決まってるんだ。
第一門から第五門までと奥門で六つある」
「奥門?」
「皇族の居住に繋がる門だ。
一番奥まっていて、奥宮とも呼ばれているんだ」
ふわー、とルリが感嘆の溜め息を上げる。
「やっぱり、ラディンネル国って田舎っぽいわよね?」
「穏やかで良い国だと思う」
やはり都会への憧れが強いのか、ルリは目をキラキラとさせて話をせがんだ。
* *
珍しい組み合わせが店にやってきた。
ルリが言うには、
「クォーズと並んで歩くと、あたしって添え物みたいなの」
ヨウスのことは嫌いではないが、二人だけでいたくないらしい。
何となくわかる気がする。
「ティス、今日のは力作よ!」
ルリは小さな包みを突き出してきた。
過去の経験が危険を察知し、おもわずのけ反る。
「大丈夫だから!」
難しい問題だ。
ルリは頭が良い。
性格もサッパリとしていて、気遣う心も持ち合わせている。
だが、恐ろしいくらい料理が下手だ。
不味いだけならしかたないが、寝込むほど危険なものを精製してくる。
ティセットの反応はしかたのないことだった。
「仕込みが終わってからな」
生きているうちに今日の仕事を片付けたい。
「新しいの?」
「魚の塩漬け」
ルリが樽のなかを覗き込む。
「クサい!」
「漬物なんだから、当たり前だろ」
ははは、とティセットは笑った。
「おや、誰かと思ったら、ルリじゃないか」
厨房からニッチのお女将さんが顔を出した。
「悪いけど、あんたのお父さんに注文をいいかい?」
「はい!」
ニッチのお女将さんが手招きするのに、ルリは駆けていった。
それで、とヨウスを振り返る。
「どうだった?」
「ごうか……く……?」
学生証を取り出したヨウスの手が止まる。
「どうした?」
ヨウスは学生証の表をティセットに向けた。
「トルクのじゃないか。
また取りに行かなかったのか!?」
落ち続けるトルクは、このところ自分で合否を訊きにいかないのだ。
ティセットも一度だけは代理で受け取りに行ったが、馬鹿らしくなって辞めた。
「どうせまた落ちたんだろ?」
「合格だよ」
「だろ?
もうこれで何回目だよ!
……って?」
「トルクは、合格してた」
「…………」
「…………」
「…………ウソ」
ヨウスは丁寧に学生証を袖で拭い、表裏を目の前で披露してくれた。
間違いない。
トルディス・カル・フェナッタ。
語学中級、取得。
「…………奇跡だ」
「そうなのか?」
「だって、あのトルクが……」
「試験のあとに答え合わせをしたけど、問題なさそうだった」
「でもヨウス、トルクなんだぞ!?」
残念なことに、トルクがこれまで散々な結果を出してきたことをヨウスは知らない。
交換生に選ばれたこと自体が間違いな気がするほどトルクの頭は悪いのだ。
それが、合格したなんて……。
「明日、黒板が降るかも」
「…………」
ティセットの呟きに、ヨウスは苦笑した。
「トルクはがんばったよ。
ちゃんと結果が教えている」
「……うん、そうだな」
そう。
これは喜ぶべきことなのだ。
「よし!
ヨウス、トルクたち呼んで来いよ。
みんなでお祝いしよう!」