「にしても、元気そうだな。
 頭うってたから寝てるかと思った」
 屋根に登れるくらい元気なら、心配ないだろう。

「少し掠ったくらいだし……。
 それより、謹慎中は大丈夫だったのか?」
 またケンカでもしてはいないかと、返って心配されるトルク。

 口一杯に酒蒸し肉のパン挟みを頬張ったトルクは、また機嫌を悪くして顔をしかめた。
「あいふふぇったいおえに、モグモグ、うあみあんふぁぇ!」
「食ってから言えよ」

 モグモグ、ごくんと口の中を片付けたトルクは、ティセットに聞かせた愚痴を繰り返した。

 ヨウスは相変わらずで、トルクの愚痴を真面目に聴いている。
 二回も聞きたくないと、ティセットは食べることに集中した。

 愚痴は一時間近くにもおよび、ティセットの腹はパンパンに膨れ上がった。
 美味しさも半減だった。



「さってと、そろそろオレ行くよ」
 すっきりとした顔のトルクは、茶器の中身を飲み干す。
「大使館にあいさつ行くんだ。
 謹慎終わりましたーって」

 皇都からの交換生であるトルクには、後見として帝国の大使が一時的についている。
 何かあればすぐに、大使に知らされてしまうのだ。

「しっかり怒られてこい」
「えー! また説教かなー」
「「自業自得」」
 ティセットとヨウスの声が重なった。





「あ」
 帰る途中、いつもとは違う僧侶を連れたクワイトル司祭に会った。
「おや」

 炊き出しだろうか、教会ではなく街方面からやって来た。
 炊き出しは、ティセットも一度、手伝いに行ったことがある、貧困層の人たちへの奉仕活動だ。

「謹慎が明けたようだね、トルク」
 クワイトル司祭の言葉に、苦笑いのトルク。
「すみませんでした。
 ヨウスにケガまでさせて」
「男の子ですから。
 あれくらい、ケガのうちにはいりませんよ」

 でも、と言葉を切るクワイトル司祭。
「ケンカをしたあとは、仲直りをしなければね」
「…………」
 そりゃムリです、とティセットは口にはしなかった。

「……ど……努力、します」
 苦虫を噛み潰したような笑顔でトルクは言った。
 クスクス、と笑い声。

「失礼」
 笑い声はクワイトル司祭のものではなかった。
 老司祭の背後にいた、若い僧侶だ。

「紹介しよう。
 息子のエイトルだ。
 今し方、カルオネ国から戻ってね」
「カルオネ国?」
 ラディンネル国から東にある国だ。

 六・七年前に、『殿下の憂鬱』と揶揄された国境問題を起こした国。
 今では興行で芝居まで作られたが、半数以上が喜劇だ。
 今年の春来祭で観た『北のアキシュ』は、貴重な英雄劇だった。



「彼らがヨウス殿の友人だ。
 ティセットに、トルク」
 二人は初めまして、と言う。
「初めまして、ティセットにトルク。
 もう帰るのかい?」

 トルクは大使館、ティセットは仕事があることを言うと、エイトルは残念だと苦笑い。