明日からは一人で起きて行かなければならない。
 もちろん起きれないことはない。
 ただ、誰かが起こしてくれるという安心感が、寝汚さを再発させていた。

(起きて、顔洗って、朝メシ、授業……)
 まだ実感がない。
 隣にいたはずの人がもういない現実を信じられない。
 ちょっと残業になっていて、今にも帰って来るのではと思う。

 けれど、待っても来ないことはわかっている。
 納得できないだけで。

「…………ティス……」
 からっぽの寝台に呼びかける。
 もちろん返事はない。

「うーん…………」
 ヨウスはその夜、なかなか寝付けず、一人でゴロゴロと寝返りを繰り返した。





 翌朝、ぼんやりと制服の胸元を留めていると、トルクが満面の笑みで部屋に入って来た。
「なぁんだ、起きてたのか!」
「雨でも振るかな?」
 ルフェランまで天井を見上げる。

「…………」
 自分はかなりだらしないやつだと思われているのだと知った。



 ルフェランは商学の中級と法学の初級。
 ヨウスとトルクは語学の中級と文学の初級が同じで、あとは算学と武科に分かれる。

「昼から一人になるけど、大丈夫か?」
 父親気分でルフェランが言えば、
「終わったら迎えに来てやるからな」
 トルクまでそんなことを言う。
 まるで初等部の子どもになったようだ。

「なんなら、オレの授業見に来るか?」
「剣術の授業は見ないほうが……」
「なぁんで?」
「見てるだけでキツそうだ」
「ラクな授業なんてあるかよ!」
「毎日吐いてるヤツがいるじゃないか」

 キャンキャンと言い合う二人を引き連れて歩くと非常に目立った。

「だいたい、上級取ってるなら剣術はもう出でなくていいだろ?
 用学に行けよ」
「だぁって、文学一個もないんだぜ?
 受けられねぇよ」
「だったら文学増やせよ」
「えぇえ~!」

「…………」
 もしかして、いつも以上に二人が弾けているのは、ティセットがいないせいだろうか。
 と、思いながら教室に入ったヨウス。

「…………」
 なんだろうか?
 いつも以上に視線が集まる。

 鼻息荒いトルクに隠れてみるが、背中に突き刺さる視線。
「……?」

「どうした、ヨウス?」
 急に背中に回られて、トルクが顔だけ振り返る。
「目立ってる……」
「いつもだろ?」
「いつも以上に」

 ははぁん、とトルクが目を細め、周囲を見回す。
「おまえの次の同室、狙ってるんだろ」
「同室? 次?」

 そういえば昨日、寮長に呼ばれていった時も、次の同室生の話だった。