人肌に温まった毛布の、いつもより強い包容力。
 枕の少し固い部分が首を支えてくれる。

 髪が小さくなびいた。
 窓を開けっ放しにしていたのだろう。

「……んー……」
 一夜漬けの温もりが心地良くて、ティセットは呻いた。
 毛布を引き寄せようと左手を引く。

 動かない……。

「……?」
 掴んでいる毛布の違和感に、ふと気付く。
 固くはないが、ふわふわ感がない。
 まるで衣類のような感触だ。



 また、髪が揺れた。

 ゆっくりと瞼を開けたティセットの眠気は、眼前にあるものを見て吹き飛んだ。
「……!?」
 唾を飲み込もうとしたが、口腔は渇いていた。

 髪がまた揺れる。
 目の前で白っぽいものが微かに動く。
 小さな呻き声。

 完全に目が覚めたつもりだが、夢だろうかとティセットは唸った。
 目の前にある……

 鎖骨。

 と、それを覗かせる襟元。
 視界の端に上下する腹部。
 ゆっくりと頭をもたげれば、疑いようもなく、同室生がいた。



 なぜか抱き合って一晩過ごしたらしい。
 狭い寝台だが、ここまで近付く必要はないのに、なぜ?
 なぜ自分はしっかりとヨウスの服を掴んでいる?

 年上として、男として、何だかショックだった。



 ひとまず起き上がろう。
 ティセットは、自分の背中に回された腕を掻い潜り、上半身を起こした。
「…………」

 ヨウスの顔を見下ろして、ため息。
 無駄に顔がキレイな同室生と同じ寝台にいると、いけない夜を過ごした気分だった。
 朝陽が嫌味なくらい演出している。



 改めてヨウスの顔を眺める。
 一季ほどを同じ部屋で過ごしたが、こんな近くで顔を見るのは初めてかもしれない。

 薄い色の長いまつ毛や、顎にある小さな傷跡。
 今は下になって見えないが、左のこめかみには黒い切傷がある。

 ヨウス自身に関してはあまり深く尋ねたことはないが、それなりに苦労して来たのかもしれない。
 なまじ顔が良いだけに、ティセットたちには経験のないこともあっただろう。
 それで内気になったのかもしれない。

 そう思うと、「まだ学生でいいよなぁ」なんて言えない。
 お金があれば学舎に入れるし、意欲があれば働くことは誰にでもできる。
 けれど、ヨウスが経験してきたことは、誰もが味わえるものではないのだ。

 だって、ティセットは産まれてこのかた、一度だって女生徒軍団に囲まれたことはない。
「…………」
 やっぱり、羨ましいかも。