「なんだぁ、賑やかだな!
 って、絡まれてんのはおまえかよ」
 声に気付いてトルクがやって来た。
 背後に武科の生徒らしい男を連れている。

「一緒に行きたいんだってさ」
 首に腕を巻き付けられたまま、仰いでティセットが言えば。
「あー、オレも同じく」
 トルクが背後の武科生を指差した。

 トルクが連れているのは二人。
 ティセットの周囲にいたの三は。
 ルフェランは実家から来るのでこれ以上は増えないだろう。

「俺はいいけど……。
 ヨウス、どうする?」
「え……?」
「イヤならイヤって言えよ?」
「…………」

 主役はティセットだが、集まった生徒の大半は明らかにヨウスが目的だ。
 内気であまり喋らず、ティセットたちがいないと誘いに乗らないヨウスと、仲良くなる機会なのだ。

 全員の意識がヨウスに向く。
 視線に晒されたヨウスは、ますます難しい顔をする。
「………………」
 小さく、ティセットは吹き出した。
 吹き出した音に気付いてトルクも笑いだす。

「な、なんだぁ?」
 笑いだした二人に周囲が驚いた。
 ティセットたちにはいつもの笑い場だが、ヨウスを神聖化した人間にはわけがわからないだろう。

「どうしたんだよ!?」
「ティス、勘弁してやれよ!」
「トルク、何なんだ?」
「笑ってないで説明しろよ」
「だって……!」
「酒は!?」
「あぁもう!」



 からかわれたことに気付いたヨウスを宥めつつ、ティセットたちは宴会場に急いだ。
 寮の食堂ではなく、いつもの安い料亭でもない。
 今までは夜だけだったが、明後日からはティセットが朝から晩までお世話になる、ニッチの親父さんの店だ。

「ちはー!」
 開店中は開けっ放しの扉を叩いて中に入る。
 ニッチの親父さんが「おう!」と包丁を振り上げ、お女将さんが奥を指差す。

 店の奥に進むと、先に来ていたルフェランが気付いて一言。
「遅い!」
 すでにルフェランは呑んべのサラさんに絡まれていた。
 太い腕がルフェランの腕に絡み付いている。

 サラさんにとぐろを巻かれたルフェランで、またひとしきり笑った。



 注文など聞かず、酒が運ばれて来る。
「では、ティセットの前途を祝して!」
 かんぱーい!
 学舎を出たときには十人ほどだったはずが、トルクが音頭を執ったときには倍になっていた。

 明らかに便乗したやつがいる。

 訳もわからずティセットに「おめでとう!」と言ってきた男。
 おそらく最初から店にいた客だ。

 ティセットの頭をワシワシと撫でながら肉にかぶりつく少年。
 近所の小間物屋にいなかったか。

 サラさんは相変わらず、お気に入りのルフェランを離さず。
「今夜は帰さないよぉ!」
「ひぃっ!」
 哀れルフェラン。