ほぼ丸ごとの野菜と、皮がカリッと焼かれた肉に甘辛タレがたっぷりかかっている。
 昼飯には早いが、見ただけで腹の虫が鳴いた。

「これ食って、俺の誇りは返ってくるのか!?」
 言いつつ、ティセットは串焼きにかぶりついた。

 まぁまぁ、とルフェランに宥められるティセットの横で、
「ヨウス半分こしよーぜー」
「あぁ、いいよ」
「くあー!
 ニッチの親父さんの串焼きはサイコーだぜ!」
「……トルク、口から何か飛んだぞ」
 呑気な二人が羨ましい。

 先ほど絡んできた女――呑んべのサラさん――の狙いはヨウスだったはず。
 しかし本人はケロリとしていて、被害はティセット一人。
 理不尽だ。





 遠笛が聞こえた。
 遥か彼方、街の中央に位置する空の王宮から。

 大行列が歓声とともに近付いてくる。
 風に乗って聞こえて来たのは聖歌だ。

 四人は串焼きを急いで平らげる。
「先頭は誰だっけ?」
 袖口で口元を拭いながらトルクが訊けば、
「シスカルト侯爵家の、フィアナ嬢だ」
 ルフェランが歓声に負けまいと声を張る。

 その年最初の上級試験に合格した者のなかから、優秀な一人が大行列の先頭に選ばれる。
 それは同時に、今年皇都へ行く交換生でもある。
 名誉あるこの代表に選ばれたいと、その回の試験だけは階級を上げる生徒もいるくらいだ。

 先頭が見えた。
 十七か十八歳くらいだろうか、まだ幼さの残る新交換生だ。
 彼女は上気した頬を満面な笑みにして、先導を取っている。

 その後に続くのが、昨年に戻った交換生。
「ロスクル家のランディックだ!
 あいつはまともだぞ」
 トルクが大声で叫ぶ。

「オレがこっちに来るとき、荷物を頼まれたんだ。
 妹にせがまれたとかで」
 貴族の息子なのに貴族が嫌いなトルクにしては、好意的な態度が珍しい。

「お礼にメシでも奢ってもらったんだろ?」
「うん!」
 ルフェランの言葉に、トルクは目一杯、頷いた。
 誘拐されやすそうなやつだとティセットは思った。



 聖火を掲げる司祭。
 続く、亡き王家の紋章旗。
 また聖火を挟んで、聖教旗。

 聖杯、大鏡、名のある僧侶が先導する、御輿。
 僧兵に担がれた御輿の上、沙幕の向こうに霞んだ人影が見える。
 大司教だ。

 世界で三人だけの大司教。
 公国カザーカのオクス大司教。
 北の帝国下、モアク国のオルベスト大司教。
 そして、ここラディンネル国のネスフィア大司教。

 法皇不在の今は、この三人が頂点となる。



「ヨウス、ホラあそこ!」
 興奮した声でトルクがヨウスの背中を叩く。
「ぐっ……!」
「!」
「うわっ!」

 勢いで屋根から落ちそうになったヨウスを引きずり上げるティセット。
「危ないだろ!」
「ホラホラあそこ!」
 聞いていない……。

 散々だなティス、とルフェランが呟いた。
 本当に散々だ。