こざっぱりとした居間。
大切に使い古された卓。
肘掛けの角が丸くなった大きな椅子。
開けられたままの扉の向こう側で、家人たちが小走りしている。
普段は静かな家なのだろうに。
今日は祭の日。
主人が式典に出るとあって、黙ってはいられない。
しばらくして、初老の男がやって来た。
「急に呼び出して、申し訳なかったね」
いつもと変わらない笑みをティセットたちに向ける。
この人が、若い僧を送ってティセットたちを呼び出したのだ。
「いいえ、そんな……」
間近で会うのは初めてだった。
司祭といえば、いつも祭壇の上にいて、ティセットたちは見上げるだけの人だ。
「クワイトル司祭様、どんなご用件でしょうか?」
緊張するティセットの替わりに、ルフェランが尋ねる。
さすがだ。
「あぁ、実はね、祭に連れ出してもらいたい子がいるのだよ」
え、と三人の目が丸くなる。
突然の申し出にティセットたちは驚く。
なぜ、面識のない自分たちに?
それをおかしそうに笑ったクワイトル司祭は、家人を呼び付けて何やら言付けた。
彼はすぐにやって来た。
「司祭様、お呼びです、か……ティス?」
ティセットたちを見て、居間の入口で固まったのはヨウスだった。
家人用の灰色の服を来て、腰には物入れがたくさんついた前掛けをしている。
本物の小姓のようだ。
ヨウスは戸惑うようにクワイトル司祭を見る。
「司祭様……これは?」
「祭へお行きなさい、ヨウス殿」
「いえ、まだ裾上げが……」
「裁縫はほかの者でもできます。
こちらの祭は初めてでしょう?」
「…………」
ヨウスがティセットを横目に見る。
行こう―――そんな意味を込めて頷いてみる。
「あなたは来客であって、修行僧ではありません」
さぁ、とクワイトル司祭に背中を押され、ヨウスはしぶしぶ頷いた。
「着替えて来ます」
ヨウスは居間を出て行った。
「やった!」
トルクがおもわずこぶしを握る。
それを見たクワイトル司祭は、意外にもいたずらっぽく笑った。
「ルフェランは、君かな?」
「はい」
手招きされたルフェランがクワイトル司祭の近くに寄る。
これを、と懐から小袋を渡された。
チャリ、と音がなってルフェランが驚く。
「司祭様、これは」
「これで彼に帽子を買ってくれるかな?」
「……ぼうし、ですか?」
「そう、帽子を。
彼は目立つのがとても嫌いでね。
帽子を被っていれば、多少は人目を気にせずにいられるだろうから」
「もしかして……。
それで、手伝いがあるから祭に行けないなんて言ったんですか?」
ティセットが少し怒った声で尋ねると、クワイトル司祭は穏やかに微笑んだ。
「彼は、あまり遊び方を知らないようだ。
君たちが教えてくれるとありがたい」
ティセットは恥ずかしくなって、顔を赤くした。
「はい……司祭様」
大切に使い古された卓。
肘掛けの角が丸くなった大きな椅子。
開けられたままの扉の向こう側で、家人たちが小走りしている。
普段は静かな家なのだろうに。
今日は祭の日。
主人が式典に出るとあって、黙ってはいられない。
しばらくして、初老の男がやって来た。
「急に呼び出して、申し訳なかったね」
いつもと変わらない笑みをティセットたちに向ける。
この人が、若い僧を送ってティセットたちを呼び出したのだ。
「いいえ、そんな……」
間近で会うのは初めてだった。
司祭といえば、いつも祭壇の上にいて、ティセットたちは見上げるだけの人だ。
「クワイトル司祭様、どんなご用件でしょうか?」
緊張するティセットの替わりに、ルフェランが尋ねる。
さすがだ。
「あぁ、実はね、祭に連れ出してもらいたい子がいるのだよ」
え、と三人の目が丸くなる。
突然の申し出にティセットたちは驚く。
なぜ、面識のない自分たちに?
それをおかしそうに笑ったクワイトル司祭は、家人を呼び付けて何やら言付けた。
彼はすぐにやって来た。
「司祭様、お呼びです、か……ティス?」
ティセットたちを見て、居間の入口で固まったのはヨウスだった。
家人用の灰色の服を来て、腰には物入れがたくさんついた前掛けをしている。
本物の小姓のようだ。
ヨウスは戸惑うようにクワイトル司祭を見る。
「司祭様……これは?」
「祭へお行きなさい、ヨウス殿」
「いえ、まだ裾上げが……」
「裁縫はほかの者でもできます。
こちらの祭は初めてでしょう?」
「…………」
ヨウスがティセットを横目に見る。
行こう―――そんな意味を込めて頷いてみる。
「あなたは来客であって、修行僧ではありません」
さぁ、とクワイトル司祭に背中を押され、ヨウスはしぶしぶ頷いた。
「着替えて来ます」
ヨウスは居間を出て行った。
「やった!」
トルクがおもわずこぶしを握る。
それを見たクワイトル司祭は、意外にもいたずらっぽく笑った。
「ルフェランは、君かな?」
「はい」
手招きされたルフェランがクワイトル司祭の近くに寄る。
これを、と懐から小袋を渡された。
チャリ、と音がなってルフェランが驚く。
「司祭様、これは」
「これで彼に帽子を買ってくれるかな?」
「……ぼうし、ですか?」
「そう、帽子を。
彼は目立つのがとても嫌いでね。
帽子を被っていれば、多少は人目を気にせずにいられるだろうから」
「もしかして……。
それで、手伝いがあるから祭に行けないなんて言ったんですか?」
ティセットが少し怒った声で尋ねると、クワイトル司祭は穏やかに微笑んだ。
「彼は、あまり遊び方を知らないようだ。
君たちが教えてくれるとありがたい」
ティセットは恥ずかしくなって、顔を赤くした。
「はい……司祭様」