ははぁん、と心中で得心する。
 自然と自分の目が細くなるのがティセットはわかった。
 そんなティセットに女の子たちは怯えて一歩、退く。

 澄した顔で教えてやる。
「あいつなら、教会の手伝いに行ってるよ」
 ティセットが言うと同時に「えー!」と非難の声が上がる。

「どーしてー?」
「信じらんなーい」
 ティセットに文句を言っても仕方ない。

 ヨウスは教会の手伝いをして稼いでいるのだ。
 しかも今日は春来祭。
 大聖堂は大忙しいだろう。



 失礼しましたー、とおざなりな言葉を残して少女たちは去って行った。
 ヨウスと祭に行きたかったのだろう。
 足取りが重い。

 残念ながら、ティセットすら一昨日ヨウスに、「針子が足りないらしいんだ」と、振られている。
 せっかくあちこち案内しようと思ったのに。

 気を取り直して支度に取り掛かると、また扉が叩かれる。
 今度はルフェランたちだろうと「開いてるよー」と、そちらを見ずに言う。

「ねぇ今日一緒に行か…………やっぱり止めるわ」
「ちょっと待て!
 今俺だけだったから止めただろ!?」

 勢いよく入って来たのは、同じ授業を受けている女の子だった。
 さっきの子たちよりも年上だが、ティセットよりいくつか下だ。

「当たり前じゃない。
 ティスと行ってどーにかなっちゃったら笑い者よ!」
「どういう意味だ!」
「そーいう意味よ!」

「帰れ!
 あいつは司祭様の手伝いに行って来ないんだ」
「ウッソ!
 信じらんなーい」
 サイテー、と文句を言いながら去って行った。
 それはこっちの台詞だ!

「扉くらい閉めろ!」
 廊下に顔をだしてティセットは叫んだ。
 ふー、ふーと鼻息を荒くして戻ろうとしたティセットの背に、誰かが声をかける。
 の太い声が。

 そーっと振り返ったティセットの視界に、トルクより巨躯の青年がいた。
 何やら顔が真っ赤だ。

「オスっ、先輩!」
 どうやら武科の初等生らしい。
 顔だけみたらおっさんだ。

 先輩としては、礼儀上、用件を聞いてみた。
「オスっ!
 クっ、クォーズ先輩をお誘いに上りました!」
「一昨年来い!」
 背中に蹴りをいれて追い返した。



 こうしてティセットは、ルフェランたちが来るまでに八組の来襲を受けた。
 ボロボロになったティセットを見て、ルフェランが一言。
「美人も大変だけど、周りも大変なんだな」

 他人事のように言われた。



「さて、気を取り直して行きますか」
 ティセットの肩を叩きながらルフェラン。
「元気出せよティス。
 アメ買ってやるからな」
「子どもか俺は!」

 三人が部屋から出ようとしたまさにその時。
「あのー」
 声がかかった。

 すわ九組目の来襲かとティセットが振り返る。
「……あ?」
 そこには、僧服を来た少年が立っていた。


   *  *